震災で亡くなった兄姉思い 芦屋の米津英さん成人式へ

2018/01/10 21:20

漢之君と深理ちゃんの写真のもとで、2人への思いを語る米津英さん=芦屋市浜芦屋町(撮影・三津山朋彦)

 阪神・淡路大震災で兵庫県芦屋市立精道小学校1年の兄漢之(くにゆき)君=当時(7)=と同市立精道幼稚園に通っていた姉深理(みり)ちゃん=同(5)=を亡くした神戸薬科大学2年の米津英(はんな)さん(20)が8日、同市の成人式に出席する。父勝之(かつし)さん(57)から聞いた震災の記憶。兄と同じ小学校に通い、追悼式典では語り継ぐ大切さを訴えた。「兄と姉はいつも私の中にいる」。幼い姿のままの兄と姉の写真に見送られ、晴れ舞台に臨む。(初鹿野俊) 関連ニュース 男らしくではなく、自分らしく 成人式の日は振り袖とスーツ着用 心身の性で葛藤した経験伝える 車いすのまま着付けやヘアセット バリアフリーで障害者の成人式 市民団体が参加呼びかけ 8月17日 人気女性YouTuber、編み上げドレスで美背中を披露「とっても綺麗」「顔ちいさすぎ!」

 1995年1月17日、一家4人が暮らしていた同市津知(つち)町のアパートは全壊し、漢之君と深理ちゃんが亡くなった。夫婦は97年6月に英さんを、5年後には弟凜(りん)さん(15)も授かった。
 米津家では震災で亡くなった2人を思い、月命日の17日にカレーライスを食べる。震災前日、漢之君と深理ちゃんが作るのを手伝い、翌17日に家族4人で食べるはずだったメニューだ。英さんはどんなに帰宅が遅くなってもこの習慣を守ってきた。ほかにも、兄姉の誕生日には家族全員で手紙を書き、それぞれの近況を報告することにしている。
 小学校などで語り部を続ける勝之さんの姿を間近で見てきた英さんにとって、兄姉は「特別に意識する必要のない、いつもそばにいる存在」だ。
 家庭の外で兄姉を感じることもある。英さんは幼い頃、深理ちゃんの同級生にかわいがられ、今も交流は続く。8年前の成人式では、深理ちゃんの写真を携えて参列した同級生もいた。「姉たちのおかげでいろんなつながりができた」と感謝する英さん。幼い頃から「人の命を救うことに役立つ職業に就きたい」と考えてきたのも、兄姉の存在が大きいという。
 薬剤師を目指し、勉学に励む英さん。成人式を迎えた娘に対し、勝之さんは「本質的にはまだ未成年」と苦笑しながらも、「一度決めたら真っすぐに進む。自分の決めた道に進めばいい」とエールを送る。
 英さんは薬剤師になる目標とは別に考えていることがある。「語り部をしている父を手伝いたい」。震災後に生まれた自分だけれど、たくさんのことを教えてくれた兄姉を、語り継いでいくつもりだ。

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