阪神・淡路大震災23年 兵庫県知事、神戸市長に聞く
2018/01/13 15:37
兵庫県知事 井戸敏三氏
阪神・淡路大震災から17日で23年を迎えるのを前に、兵庫県の井戸敏三知事と神戸市の久元喜造市長が神戸新聞社のインタビューに応じた。井戸知事はまちのにぎわい回復のため、新しい地域づくりが必要との認識を示し、久元市長は将来の災害の備えとして、砂防ダムなどのハード整備を進めていく考えを語った。
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■兵庫県知事 井戸敏三氏 新たな地域づくりが必要
-震災から23年。残された課題は。
「まだ震災復興のステージだとは、県民自身ももう受け止めていない。次の新しい兵庫づくりのステージに入っていると認識すべきだ。ただ、震災の復旧復興の中で、できていなかった部分もある。その一つが高齢者対策。見守り事業など、現場で必要性があると考えられていることは、県と市が共同で継続していこうとしている」
「もう一つは、まちのにぎわいが戻っていないという点。特にいつも言われてきたのが神戸市長田区。(来年6月に)県市の合同庁舎を造り、機関を移転させる。千人以上の職員が通い、集まる人も増えるので期待したい。商店街については中心街に集約を進め、残ったところに住宅や事業所を整備していくなど、てこ入れが必要だ。これは復興と、新しい地域づくりの両方を狙った事業といえる」
-風化も懸念される。
「震災20年の時のスローガンは『忘れない』『伝える』『活(い)かす』『備える』だが、23年を迎える1・17のテーマでもある。もう一度、さらに強く主張していかないといけない」
-防災庁の創設を主張している。
「防災庁はゴールや目的ではない。事前防災という発想の確立が目的で、防災庁は象徴だ。災害が起こっても大きな被害を招かないようにしなければならない。復興計画を事前に用意しておき、災害後、直ちに取りかかれる体制をつくっておくことが重要だ。国にはそのための仕組みづくりをどんどん提案していく」
(聞き手・黒田勝俊、前川茂之、撮影・大山伸一郎)
■神戸市長 久元喜造氏 災害に備えハード面整備
-震災から23年となる。
「突然の大災害に、市民が意見の違いを乗り越えて危機を克服し、まちをよみがえらせた。地震に備えなければならないという意識が市民、行政、企業に共有されていると感じる」
-残された課題は。
「被災者に生活資金として貸し付けた災害援護資金は、完済した人はいろんな思いがあるかもしれないが、20年以上たって高齢化も進んでおり、終局的な解決を図ってきた。既に65億円の返済を免除し、残った人についても解決に向けて国と最終調整する」
「新長田駅南の再開発地区は、居住人口は震災前を上回っているが、就業人口は回復していない。昨年、着工した県と市の合同庁舎が来年6月に完成すれば、波及効果も含め就業人口が震災前の4900人をほぼ回復し、にぎわいが飛躍的に向上するはずだ」
-災害への備えは。
「昨年の九州北部や、2015年の関東・東北など、豪雨災害が頻発している。六甲山などを直撃すると、相当な被害になる。砂防ダムや降雨予測システムの整備などを着実に進める。南海トラフ巨大地震対策では、水門や鉄扉の遠隔操作化を検討する」
-震災の経験を市役所でどう引き継ぐか。
「OBにも協力してもらい、新規採用や昇任時の研修を地道に続ける。また、市外の災害支援に、震災を経験したベテランと経験していない若手をペアで派遣しているが、被災地活動という現実の中で先輩から指導を受けるのは意味があることだと思う」
(聞き手・森本尚樹、若林幹夫、撮影・中西大二)