私たちにできること 舞子高環境防災科15年(5)1・17

2018/01/19 05:30

「ひょうご安全の日 1・17のつどい」でメッセージを読み上げる後藤謙太さん(中央)=神戸市中央区脇浜海岸通1(撮影・大山伸一郎)

 阪神・淡路大震災後に生まれ、災害を学ぶ舞子高校環境防災科の生徒たち。毎年、気持ちを新たにし、自らを見つめるのは、やはり同科創設の原点「1・17」だ。大地震から23回目の1月17日が巡り、市内のそこここに、彼らの姿はあった。 関連ニュース 神戸マラソン2024、復興の地を2万人駆ける 阪神・淡路大震災から来年1月17日で30年 神戸の街、2万人が駆け抜ける 「神戸マラソン2024」17日号砲 終盤の難所は今大会が最後に 阪神・淡路で壊れた「大絵馬」ようやく復元 尼崎藩主が270年前奉納、破片かき集め大切に保管 西宮神社

 17日午前5時46分、雨の三宮・東遊園地。まだ明けきらぬ闇の中、竹灯籠の明かりを囲んで黙とうする「1・17のつどい」の輪に、3年生の佐藤柚さん(18)、崎田莉子さん(17)、片山柚希さん(18)がいた。
 3人で誘い合わせ、佐藤さんと崎田さんは初めて参加。佐藤さんは黙とう直前の時報に恐怖を感じたという。「震災のときに起きたことが、目の前にぶわーっと迫ってくる気がした。ああ、23年前のこの時間にすごく揺れて建物が倒れて、いろんなことがあったんだなって…」。今春、岡山県の大学に進学する。「来年は来られないかもしれないけど、向こうで何ができるか考えたい」
 神戸の大学に進む崎田さん、片山さんも「来年も来たい」「大学の友人も誘い、私たちの世代が震災に関心を持つきっかけにしたい」と声をそろえた。「来て良かった」、そう話して3人は学びやに向かった。
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 「こんにちは! 舞子高校環境防災科です!」。午前10時半、雨が降り続く中央区・HAT神戸の「なぎさ公園」に元気な声が響いた。防災や被災地支援関連のブースが並ぶ「交流ひろば」。活動を広く紹介しようと参加した1年生たちは、軒を並べる企業や自治体、NPO法人の人たちに負けじと声を張り上げた。
 坂口陽菜さん(16)は、やや緊張した面持ちで来場者らに説明した。「うまく伝わったかな。興味を持ってもらいたいのに、言葉選びが難しい」とはにかむ。一方で、雨でもにぎわう会場に「震災は風化していると言われるけど、こんなにたくさんの人がいる」と強いまなざしを向けた。
 休憩時間、他団体が出店する炊き出しに並んだ久米崚平さん(16)。年配の女性スタッフから「防災を学んでいるんだから、この先も伝えていって」と、ハッパを掛けられた。「驚いたけどうれしかった。気持ちが引き締まる」と話した。
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 正午すぎ、なぎさ公園にほど近い「人と防災未来センター」前で開かれた「ひょうご安全の日 1・17のつどい」。3年生の後藤謙太さん(18)が高校生代表としてメッセージを読み上げた。「一人でも多くの人が防災に関心を持ち、語り継ぎを始めるきっかけとなれるよう、まずは私自身が語り継ぎます」
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 翌18日午後、舞子高校(垂水区学が丘3)の校舎では、谷川彰一校長(59)が教壇に立った。谷川校長は、23年前の神戸で活躍した市民3人を取材し、聞き取った資料を準備していた。
 東灘区の医師、避難者のケアに努めた教師、被災した障害者を支援した養護教諭。生徒は資料を読み、内容を相手に伝える。「ジグソー法」と呼ばれる学習方法。生徒に自ら語らせることで、震災を追体験させようとする狙いだった。
 3人の体験には「人を元気にさせた」という共通点があった。「君たちの周りにはたくさん震災を知っている人がいる。どれだけ聞き出せるかが、これからの課題だよ」。谷川校長は生徒たちに語りかけた。
 若い世代が、震災を語り継ぐ。谷川校長はその意味を「風化させないこと、ただそれだけ」と話す。「次の災害に備える人が増えることで、一つでも助かる命があるかもしれない」
 「1・17を忘れない」。原点を見据え、環境防災科の取り組みは続く。(勝浦美香、上杉順子)
=おわり=

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