「1・17」ドキュメント(1)早朝~5時46分

2019/01/17 20:09

5・30 神戸市灘区・六甲道南公園

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 4・45 神戸市長田区・御蔵北公園 暗闇の中、ボランティアが紙灯籠の準備を始める。吐く息は白く、手がかじかむ。読経のため、福岡県大牟田市から駆け付けた僧侶遠山良徳さん(50)は「大勢の幸せな暮らしが奪われた。犠牲者のご冥福をお祈りしたい」。
 5・30 西宮市・地すべり犠牲者の碑 「静かだな」。住民がつぶやく。耳に届くのは、そばを流れる川のせせらぎの音。震災時、地すべりで川は土砂に埋まり、34人が亡くなった。今年も住民有志が慰霊祭を開いた。「もう24年か、早いな」。震災が起きた46分を静かに待つ。
 5・30 神戸市灘区・六甲道南公園 南八幡婦人会の伊達美智さん(85)が慰霊碑の前でろうそくをともし、白いユリの花を手向けた。震災20年で追悼行事は取りやめになったが、「たくさんの命がここで失われ、毎年、手を合わせに来る人がいる。ここに何もなかったら寂しいでしょう」。
 5・30 神戸市長田区・大国公園 集まった住民が線香を手向ける。野田北部地区では41人が命を落とした。高齢化で継続が危ぶまれた集いは、有志に引き継がれた。義兄の妻を亡くした西村信也さん(77)は「皆で悼むことができる場がありがたい」。
 5・30 神戸市長田区・若松鷹取公園 周辺で亡くなった人と同じ数の105本のろうそくに、参列者がそっと灯をともす。手を引かれた小さい子どもの姿も。旭若松連合会の城本直良会長(73)は「昔と比べ人が減った。遺族も年を取ったからな」とつぶやく。
 5・40 明石市・西明石駅前の仮設住宅跡地 850本のろうそくがともされ、暗闇に「1・17」の文字。約100人が静かに目を閉じる。当時ボランティアとして奔走した松本茂子さん(76)は「多くの人が震災を思って集まってくれる。防災の知識とともに伝えていかなければ」と話す。
【5時46分】
 神戸市中央区・兵庫県庁 防災服姿の井戸敏三知事や県警の西川直哉本部長、県幹部ら約20人が、2号館13階の展望園で夜明け前の街に向かって黙とう。井戸知事が「震災25年に向けて、風化対策に力を入れる1年にしたい」と訓示。
 神戸市中央区・東遊園地 約5千本の竹灯籠が、暗闇に「1・17」を浮かび上がらせる。揺らめくともしびに、会場は深い祈りに。祖父母を失った自営業の村上健太さん(38)は「今年も来たよ。仕事頑張るから天国で見守っていて」。
 神戸市中央区・ビーナスブリッジ 「天国に一番近い場所で」と、川崎市のトランペット奏者松平晃さん(76)が「花の街」を奏でる。参加者の打ち鳴らす「神戸・希望の鐘」と調和した音色は、夜景を抱いた神戸の空に吸い込まれる。
 神戸市東灘区・中野南公園 ろうそくの灯に囲まれた「命」と刻んだ碑に向かい、静かに手を合わせる人々。西宮市で被災した赤瀬川三郎さん(68)は、仕事を失って死を選んだ隣人を思い、声をつまらせる。「24年たっても、忘れようにも忘れられない」
 神戸市東灘区・本山第一小学校 ろうそくに一つ、また一つと灯がともる。児童3人を追悼し、約200人が黙とう。ボーイスカウトの嶋村心温(こはる)さん(14)は「何かあれば人を助けられるよう、備えていきたい」と決意を語る。
 神戸市兵庫区・川池公園 100人以上をしのぶ慰霊碑前で黙とう。同区会下山町3の自宅が全壊した後藤政弘さん(86)はつえで体を支えて参列し、「近所でようけ亡くなった。子や孫の世代が安心して暮らせる社会に」と願う。
 神戸市長田区・日吉町ポケットパーク ペットボトルの灯籠に灯がともり、僧侶のほら貝と読経が響く。自宅が全焼した竹中弘子さん(73)は「大事な孫たちには、あんな苦しみを味わわせたくない」。新潟県中越地震の被災地・旧山古志村の住民6人も訪れ、慰霊の地蔵に手を合わせる。
 神戸市長田区・カトリックたかとり教会 聖堂に小さなろうそくの明かりが揺れる。神田裕神父(60)が住民や信徒らへ向け「災害で今も復興に向けて苦しむ人へ祈りをささげたい」。僧侶のほら貝の音が響き、約80人が目を閉じる。
 神戸市須磨区・千歳公園 地域で亡くなった47人を追悼する「千歳復興の礎」の前でろうそくの灯が揺れる。次男を亡くした崔敏夫さん(77)や中高生ら計8人が黙とう。
 西宮震災記念碑公園 西宮市内で亡くなった1086人の名が刻まれた碑の前で黙とう。母朝子さん=当時(65)=を亡くした奈良市の田尻泰雄さん(58)は「震災前日、長い間仏壇に手を合わせてたね。何か感じてたんかな。こっちは何とかやってまっせ」。

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