1歳娘と母の分も歩む 命日「1・17」に誕生
2019/01/17 22:39
亡き母と、1歳を迎えた娘への思いを語る永尾奈津紀さん=17日午後、神戸市中央区加納町6(撮影・山崎 竜)
「無事に生まれたよ」。神戸・東遊園地にある「慰霊と復興のモニュメント」で、神戸市東灘区の永尾奈津紀さん(30)が、母さつきさん=当時(33)=の銘板に手を合わせた。腕の中には、この日で1歳となった長女美月ちゃんがいる。母の命日と娘の誕生日-。悲しみと喜びが交錯する不思議な巡り合わせを感じながら「これまで1・17は暗い日だったけど、これからは娘と共に明るい日にしていきたい」と前を向いた。
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24年前の1月17日、同市東灘区の自宅が全壊した。永尾さんと姉の真奈美さん(35)は逃げ出して助かったが、母は鏡台の下敷きとなり帰らぬ人となった。
震災後は祖父母や叔母らの愛情を受けて育った。5年前には美容師になる夢もかなった。しかし、いつしか大好きだった母の声や、抱きしめてくれた温かな感触を思い出すのが難しくなっている自分に気付いた。
「忘れてしまうほどの思いだったのかな」。自分への悔しさや情けない気持ちがない交ぜとなり、ふさぎ込む日が増えた。特に1月17日は暗く重い日だった。
出産予定日は昨年1月28日だったが、思いがけず同16日に破水した。「あの日だけは避けたい」。娘に震災を背負わせるのでは、との不安がよぎったが翌朝、美月ちゃんが生まれた。
しかし、日々成長する娘の姿に思った。「無駄な日なんてない」。それがたとえ1月17日でも-。自分の考えの変化に気付いた。
毎年、午前5時46分に合わせて東遊園地に足を運んできたが、今年は初めて空の明るい午後に訪れた。「失った悲しみ以上に震災で多くの人が助け合ったこと、人の温かさを知ってほしい」との思いからだった。
「髪を結ったり、写真をいっぱい撮ったり…。母とできなかったことをしてあげたい」。いつの間にか腕の中で寝息を立てている娘を、温かな母のまなざしで見つめた。(篠原拓真)