親の障害や自死乗り越えた大学生 竹下景子さんと朗読
2020/01/04 11:18
朗読への思いを語る関西学院大1年の上野明日香さん=神戸市東灘区本庄町1、神戸レインボーハウス
阪神・淡路大震災などの災害を題材にした詩を朗読する「竹下景子 詩の朗読と音楽の夕べ」に、阪神・淡路の遺児らを支援する施設「あしなが育英会・神戸レインボーハウス」(神戸市東灘区)で暮らす関西学院大生2人が参加し、朗読者を務める。親が重い障害を負ったり、自死したりした経験を乗り越えてきた2人は「震災を知らない自分が読むことで、同世代に伝わることがあるはず」と意気込む。(篠原拓真)
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同大1年の上野明日香さん(19)と3年の江口仁さん(22)。1999年から続く同夕べでは、次世代に語り継ごうと、震災25年を機に初めて朗読者を一般公募。神戸や兵庫県芦屋市に住む10~70代の5人が24日、兵庫県公館の同夕べで竹下さんと舞台に立つ。
神戸レインボーハウスは阪神・淡路で親を失った子を支援するために設立されたが、2015年までに震災遺児は全員成人した。現在は親に重い障害があったり、病死や自死で親を失ったりした子どもたちを受け入れている。
神戸市北区出身の上野さんは、両親が阪神・淡路を経験。父親が脳内出血で重度障害者になり、大学進学をきっかけに同ハウスで暮らす。神戸・三宮に勤めた父親からは、被災地の惨状を聞いたことがある。「震災は一瞬で命を奪い、怖いもの」との印象が強かったが、遠い存在でもあった。
それは神戸ルミナリエでも感じた。光の回廊にみせられ、毎年訪れていたが、18年の開催時に初めて、阪神・淡路の犠牲者追悼と記憶継承の思いが込められていると知った。
「地震はいつ起きるか分からない。次は私たちが引っ張っていかないといけないが、何ができるのか」
朗読者に応募した理由は「違う側面から震災を知りたい」から。当時、高校3年の女子生徒が書いた詩を担当する。両親や祖父母の被災を経て、自分たちがいることを表現した作品だ。
「震災が多くの人の共通事項として存在する。それだけ大きな出来事だった」と上野さん。「受け継がれてきた命を大切にしたいという思いを、自分なりの表現で伝えたい」と話す。
福岡県久留米市出身の江口さんは、小学生の時に自死で父親を失い、あしなが育英会の支援を受ける。「若い世代に災害を伝えたい」と朗読者に手を挙げた。
11年の東日本大震災、16年の熊本地震-。これまで起きた災害はテレビの中の「非現実の世界」だった。18年の大阪府北部地震で初めて大きな揺れを体験。同じ寮に住む友人らに連絡を取ったが1時間以上安否が分からず、大きな不安を抱いた。
「過去の災害を知らないと防災が甘くなる」と江口さん。「震災を知らない僕らが舞台に立つことで、同世代の人たちに響く言葉もあるはず」と力を込める。