(5)チューリップ 仮設住宅の跡 春待つ球根

2020/01/11 14:20

住民約100人が球根を植えた。周辺には震災から5年間、仮設住宅が並んでいた=神戸市東灘区向洋町中5

 そこには、阪神・淡路大震災の起きた1995年から約5年間、数百戸の仮設住宅が立ち並んでいた。 関連ニュース <能登はやさしや>(1)観光列車 語りを復興の力に 論説委員・岸本達也 女性視点の災害対策を期待 能登被災者、諦めの声も 能登豪雨1年、被災地の今 ボランティアに取り組んだ自由が丘中生4人の現地リポート(上)

 神戸・六甲アイランド。毎年春になると、約3万本のチューリップが咲き誇る。そのために昨秋も住民らが集まり球根を植えた。
 呼び掛けるのは「六甲アイランドを美しい街にする会」。米谷稔代表(80)は震災後、島内美化のためさまざまな花を植えている。
 当時、仮設の住民が毎朝開くラジオ体操に参加し、「人生狂ってしまった」などと、悲痛な声を聞いた。「せめて花を見て心を和ませてほしい」と考えた。
 当初は、仮設からも25人が参加。一緒に土を耕し花壇をつくった。しかし島内の公営住宅などに入居を果たすと姿を見せなくなった。
 「ほっとして体が動かなくなったんでしょうね」
 現在、仮設の跡地はマンションや芝生広場に。毎年春に咲きそろうチューリップと花壇の花々だけが、わずかに当時の記憶をつないでいる。(三津山朋彦)

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