新長田再開発事業 市が検証報告書「商業にぎわいに課題」

2020/12/23 18:03

2023年に事業が完了する新長田駅南地区再開発地区=神戸市長田区

 神戸市は23日、阪神・淡路大震災後に進めてきた同市長田区の新長田駅南地区再開発事業(約20ヘクタール)の検証結果を発表した。被災者の早期生活再建や災害に強いまちづくりなど「事業目的はおおむね達成できた」と評価する一方、「商店街としてのにぎわいに課題が残る」と指摘。教訓として、社会情勢の変化に応じた計画見直しの必要性や行政のガバナンス(統治)強化などを挙げた。 関連ニュース <もふもふ堂の街角レトロ風景>垂水漁港 2013 昔と変わらぬ景色に「ほっ」 【首都圏】一人暮らし女性が住みたい街は? 2位「高円寺」、1位は「昔ながらの商店街が残る街」 「夜になると営業する文房具店!?」昭和な佇まいに惹かれる人続出「日が沈むと時空の軸がずれるのだろうか…」

 全国最大規模となった同事業は2003年に完了予定だったが、土地の買収・売却などが難航。23年にようやく完了する見通しとなった。再開発ビルは集客の低迷に加えて、高額の管理費負担などが入居した商店主らを圧迫し、「復興災害」とも批判されてきた。
 市は8月から、大学教授や公認会計士らによる有識者会議(座長=加藤恵正・兵庫県立大大学院教授)を4回開催し、検証結果をまとめた。
 報告書では、再開発ビル商業床への入居が権利者の約半数にとどまり、3層構造にした商業施設の地下1階と地上2階部分の処分が進まなかったとした。地価の大幅な下落もあって収益が悪化したことから、事業完了時点の収支見込みは赤字326億円に上る。これ以外にも181億円分の商業床が未売却のまま賃貸されており、赤字幅が拡大する可能性もある。
 久元喜造市長は「計画段階と乖離が生じるのは、大規模な震災復興事業では避けられない。地価の下落が続き、デフレとの戦いだった」と指摘。商業の活性化には「事業の終結まで向き合わなければならない」と述べ、夜間人口が震災前の約1・4倍に増えたことなどを踏まえた新たなコミュニティーづくりを目指す方針を示した。(石沢菜々子)
 【新長田駅南地区再開発事業】 阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受け、1995年3月に都市計画決定された。神戸市が用地を買い上げ、再開発ビル計44棟を建てる計画で、うち41棟が完成し、残る3棟は県立総合衛生学院(神戸市長田区海運町7)の移転などで2023年までに建設予定。市は20年3月、土地買収が進まない1区画を事業対象から外し、事業完了の見通しとなった。

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