土日は光景一変 六甲全山縦走路ルートの高倉台近隣センター

2019/06/29 05:30

喫茶みやみずの店主北原利雄さん=須磨区高倉台4

 精肉、総菜、喫茶店、自治会館…など約20の店舗や施設が集まる「高倉台近隣センター」(神戸市須磨区高倉台4)。土日になると、その光景は一変する。登山ウエアにリュックサック姿のハイカーが続々と通り過ぎる。実はここ、六甲全山縦走路のルートで給水地点となっている。須磨から宝塚までの56キロ(神戸市の公称)の道のりで、ショッピングセンターを通過するのはこのポイントだけだ。(喜田美咲) 関連ニュース 王位戦第3局2日目、午前のおやつは…なしとあり 王位戦第3局2日目始まる 木村王位の封じ手は「2三歩」 「封じます」1日目終了 対局中は温泉街で配慮も

 北須磨、白川台、高倉台、名谷、落合、横尾の6団地からなる須磨ニュータウン。高倉台は3番目の1973年に入居が始まった。同時に同センターも誕生した。かつて生鮮市場もあったが、郊外にできた大型商業施設などの影響を受け閉店。現在はグループホームになっている。
 休日、同センターをのぞくと、店内や外のベンチで休憩する登山者の姿が数多く見られた。友人と登山途中の会社員(32)は「スーパーが朝早くから開いていて、休憩地として利用している」と話す。
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 数日後の平日、同センターを訪れると、土日と比べて人影は少なかった。
 午前9時。一番端にある喫茶「みやみず」を訪ねた。店内は地域の高齢者でにぎわい、モーニングタイム中。店主の北原利雄さん(78)が開口一番「遅いよ」。「えっ?」と驚いていると、「うちは6時半から店を開けてて、常連さんは8時台が勝負だから」と笑う。店の中央には公衆電話ボックス。会計はそろばんで。まるでタイムスリップしたような空間が広がっていた。
 ほとんど毎日朝食を食べに来るという女性(66)は「1人で来ても、ここで誰かと話せる。ほっとする場所」とほほ笑む。話の輪に入り、一緒にトーストとサラダのモーニングセット(400円)を口にした。
 一方で少子高齢化は容赦なくこの街を襲う。ピーク時に1万1千人だった高倉台の人口は、昨年末には7千人を割った。高齢化率も42・2%(2015年国勢調査)と同区平均を12ポイント上回る。高倉台連合自治会の指原哲司事務局長(64)は「世帯数の変化はあまりないが、家族数が減少している」と指摘する。
 ただ、明るい兆しもある。ポートアイランドに移転した県立こども病院の跡地(同区高倉台1)に21年、商業施設が完成予定だ。同自治会の塩田俊一事務次長(70)は「登山道でもあり、これほど緑に囲まれた地域は珍しい。若者の入居につながるかは分からないが、にぎわいは取り戻せるのではないか」と期待を込めた。

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