伝統の盆踊り「塩屋音頭」復活 若い世代への継承へ

2018/09/12 00:29

本番に向け、北川さんの指導を受けて練習する参加者ら(撮影・吉田みなみ)=神戸市垂水区塩屋町4

 太鼓やお囃子のリズムに合わせ、櫓の周りで踊り手たちがゆったりと踊る。神戸市垂水区塩屋では毎年8月24、25日、地元の公園で「塩屋音頭」と呼ばれる盆踊りが催される。300年近い歴史を持ち、一時は途絶えた祭りの復活を支えたのが、塩屋音頭保存会で踊り手を務める北川保幸さん(74)=同区=だ。 関連ニュース 伝統の盆踊り「口説き音頭」未来へ 幼稚園で手ほどき 西区・上池の自治会や保存会  ハーバーランドで恒例の盆踊り デブ猫「マル」も登場 県議補選明石市選挙区 立民新人が立候補を表明

 かつて「播磨の東のはじまり」と呼ばれていた塩屋地区。塩屋音頭は、その播磨国にあった美嚢郡吉川町(現・三木市)の「吉川音頭」を源流に持ち、江戸時代の中期に伝えられたとされる。当時は盆の8月14日から15日にかけ、夜通し踊られたという。
 北川さんは塩屋で生まれ育ち、幼いころから塩屋音頭に親しんだ。娯楽が少ない時代の楽しみの一つだったといい、「盆踊りの2日目にある仮装大会が大にぎわいだった」と振り返る。
 しかし、戦後になると、祭りの担い手だった青年会が解散。盆踊りも中断したが、1978年ごろ、地元の西村五一さん(故人)を中心に約10人で「塩屋音頭保存会」を設立した。
 北川さんも踊り手として立ち上げから関わり、地元の長老に話を聞いたり、吉川音頭の見学をしたりして研究した。「正確な記録がほとんどなく、残っていたテープも雑音が多かった。手探りの状態から形にできた達成感があった」。1曲が40~60分とやや長いが、ここ数年は若い世代にも親しんでもらおうと、音頭を現代風にアレンジしたり、本番前に講習会を開いたりしている。
 塩屋中央自治会長を27年務める北川さん。最近は塩屋の歴史をパンフレットにまとめるなどして、塩屋音頭の継承に向けて積極的にPRする。「塩屋音頭は地域の結びつきを大切にする象徴。地元の子どもたちにも踊ってもらえるように伝え続けたい」。本番に向けて、力をみなぎらせた。(久保田麻依子)

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ