ビール市場どう変わる? 酒税法改正で減税
2020/10/25 11:07
神戸新聞NEXT
酒税法が10月1日に改正されました。ビールの税率が下がって手に取りやすくなった一方、価格が安く人気だった第三のビールの税率は引き上げられ、増税前にまとめ買いをする動きも見られました。今後も段階的に改定される予定です。消費に影響はあるのでしょうか。(中村有沙)
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■第三のビール増税 発泡酒含め26年一本化
酒税法はビール系飲料を中心に、3段階に分けて変わります。今回はその第1弾。いずれも350ミリリットルあたり、ビールが7円の減税、第三のビールが9.8円の増税となりました。
今後の改正は2023年と26年です。ビールは26年までにさらに15.75円減税されます。一方、第三のビールは23年に発泡酒と統合されて増税。26年には発泡酒の税率が引き上げられ、ビールと一本化されます。
政府は、「味や作り方が似ている商品の税率を同じにする」と、改正理由を説明しています。税率の差がメーカーの商品開発や、消費者の購入動機に影響を与える状況がよくないのだそうです。
1990年代半ば、顧客獲得にしのぎを削るビールメーカー各社は、税率が低い発泡酒の開発に力を入れました。発売すると、安さで人気を呼び、売り上げを伸ばしていきました。
すると政府は、03年に発泡酒の税率を引き上げました。メーカー各社は、さらに安い商品を販売しようと、麦芽や麦を使用せず、発泡酒に分類されないビール風味の酒を作り出しました。一段と税率が低い「第三のビール」です。市場は急拡大し、次々と新しい商品が登場しました。
税改正はこうした経緯を踏まえ、魅力的なビールの開発を促します。安価な酒を飲む人が増えて税収が少なくなったから見直す訳ではないといいます。
■健康に配慮 おいしさも追求へ
10月1日以降、兵庫県内のスーパーでは、ビールの売り上げが好調です。生活協同組合コープこうべ(神戸市東灘区)では、1~11日のビールの売上額が前年の同じ期間の105%でした。販売の現場からは、「ビールを手に取る客が増えた」との声が聞かれるそうです。
大手ビールメーカーの関係者は、「改正でビール市場は確実に拡大する。今年はビール強化元年になる」と受け止めています。「せっかく発泡酒や第三のビールの商品力を高めてきたのにという気持ちもあるが、培ったノウハウをビールに投入していくことになる」といいます。
具体的には、「糖質ゼロやプリン体ゼロのビール開発が激化する」と予想。健康に配慮しつつ、おいしさを追求するビールが生まれそうです。
地ビールメーカーは改正をチャンスと捉えています。「六甲ビール」のアイエヌインターナショナル(神戸市北区)の中島学専務は、「ビール回帰が進めば『もっと多様なビールを味わいたい』と、地ビールやクラフトビールの世界に足を踏み入れる消費者も多くなるのではないか」と話します。
もともと、こだわった材料などを使い、原価が高い地ビール。「減税を即座に価格に反映しづらい」といい、中長期的な市場の変化に期待しています。
■清酒、ワインも税率変更
一連の改正では清酒やワインなど果実酒、チューハイの税率も変わります。
今回、清酒は3.5円の減税、ワインは3.5円の増税となりました。23年にさらに清酒が下がってワインが上がり、税率は同じになります。
清酒とワインは酒税法の分類では同じ「醸造酒類」。ビール系と同じ考え方で、作り方が似ている酒として税率が統一されます。
一方、チューハイはビール系と同じ「発泡性酒類」で、ビール系に近づけるため、26年に7円の増税となります。