仮設住宅26年でどう変化? 災害時、被災者の生活拠点として不可欠
2021/01/17 10:24
北海道胆振東部地震の被災者向けに設置されたモバイル型仮設住宅(日本ムービングハウス協会提供)
1995年1月17日の阪神・淡路大震災から26年がたちました。発生直後には、神戸・ポートアイランドなどの広い空き地や公園にたくさんの応急仮設住宅が並び、多くの被災者が暮らしていました。当時はプレハブでしたが、その後、仮設住宅は災害が起きるたびに進化してきました。普通のアパートが仮設住宅となり、家の形のまま移動可能な「モバイル型仮設」も登場しました。被災者の暮らす環境は大きく変わってきています。(高田康夫)
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■プレハブから借り上げへ 移動可能型も登場
応急仮設住宅は災害救助法を根拠として都道府県や市町村が設置します。
阪神・淡路では、プレハブなど4万8300戸が建設され、供給までに数カ月かかるケースもありました。避難所生活が長くなり、病気で亡くなる「災害関連死」も目立ちました。
その後は、民間賃貸住宅などを借りる「借り上げ型(みなし仮設)」が主流に。2011年の東日本大震災では半数以上、熊本地震(16年)では4分の3以上を占めました。利点は、建設費が要らず、素早く提供できることです。
ただ、被災者が分散し、暮らしが見えにくいので、見守り活動が難しく、コミュニティーも維持しにくくなります。同じ賃貸住宅にもともと住んでいて、災害で職を失った人などとの支援の格差も課題です。
18年の西日本豪雨では、初めてモバイル型仮設が使われました。クレーンでつり上げ、トレーラーで運べます。同年の北海道胆振(いぶり)東部地震の被災地や、昨夏に豪雨災害があった熊本県球磨(くま)村でも使われています。
日本ムービングハウス協会によると、依頼から鍵を渡すまで8日間で済んだ例も。2年間のレンタルで、再利用するのも特徴です。ただ、ストックがまだ少なく、大量に供給するのは難しいといいます。
■避難所、進まぬ環境改善 コロナを機に「密」回避へ
一方で、災害発生直後の避難所環境はあまり改善が進んでいません。
阪神・淡路では、足を伸ばして寝られない避難所が多く、1人当たりの占有面積は1~2平方メートルだったとの調査があります。その後も災害直後の避難所は、同面積が狭いまま。
東日本大震災で、石巻赤十字病院が宮城県石巻市の避難所を調べると、同面積は約2平方メートルでした。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の難民キャンプ設置基準(1人当たり3.5平方メートル)以下で、同市に改善を申し入れました。
そんな避難所も、新型コロナ対応で変化を迫られています。兵庫県では、ソーシャルディスタンス(社会的距離)確保のため、これまでの1人当たり3平方メートルを、3人家族で20平方メートルとする指針を示しました。
もし確保できない場合は、高さ1.4メートル以上の間仕切りの設置を求めました。各市町は避難所を増やしたり、資材を準備したりして、対応を急いでいます。
避難所の「密」を防げば、感染防止とともに生活環境改善につながります。災害関連死を減らすためにも、この指針を今後の避難所の標準とするべきです。
■南海トラフ発生なら 県内3万6100戸必要
南海トラフ地震で想定される最大の被害が出ると、兵庫県内では3万6100戸の仮設住宅が必要になると試算されています。
県は、平時に賃貸住宅を「セーフティネット住宅」として登録してもらい、災害時にすぐ、みなし仮設として提供しようと、登録を進めています。
災害発生時に、県や市町が、この情報を被災者に提供し、利用申し込みがあれば協力して契約、入居につなげる仕組みです。
2020年3月から募集を始め、災害時以外の提供希望も含めて約1万2千戸が登録。ただ、必要な戸数にはまだ足りていません。
県住宅政策課は「みなし仮設として提供できる住宅は、あればあるほどありがたい」と、空き家の所有者に登録を求めています。
プレハブなどの建設型仮設住宅を確保する準備にも取り組んでおり、事業者でつくる団体と事前協定を結んだり、各市町に仮設住宅建設の候補地を報告させたりしています。
また、モバイル型仮設は「仮設住宅に限らず、庁舎に被害があった場合などにも使える。かなり有効なアイテムだ」として、県公営住宅課が確保に向けた協議を業界団体と進めています。
県は、建設型とみなし仮設をどのような割合で提供していくか検討しています。行政には、災害時に素早く対応できるよう、事前に必要な数の仮設住宅を想定し、提供できるようにしておくことが求められています。