多様化する性的少数者の概念 「LGBTQ+」って知ってる?

2021/06/13 08:58

同性婚訴訟の札幌地裁判決後、「違憲判決」と書かれた紙を掲げる原告の弁護士と支援者ら=3月17日、札幌市

 皆さんは左利きの知人はいますか。誰か1人くらい、思い浮かぶのではないでしょうか。電通ダイバーシティ・ラボの調査(2020年)によると、日本におけるLGBTなど性的少数者の割合は8.9%。左利きの人口とほぼ同じとされています。同性同士のカップルを公的に認めるパートナーシップ制度を導入する自治体が増えるなど社会的な理解が少しずつ前に進む一方で、無知からくる偏見はいまだに根強く残っています。また、自民党は性的少数者への理解増進を図る法案について、今国会への提出を見送る方針です。近年の性的少数者を巡る社会の動きを振り返ります。(名倉あかり) 関連ニュース 「性的少数者は病気じゃない」シンガポール 禁止条項撤廃を経て理解深める定例イベント エルトンとの共作のブランディ「葛藤する性的少数者の若者の助けになれば」  「播州織の魅力広めたい」西脇高生が万博披露前にリハーサル 障害者や性的少数者想定した衣装も


■県内自治体でも広がる パートナーシップ制度
 2015年、東京都渋谷区と世田谷区が、全国で初めて同性のカップルを婚姻に相当する関係と公認するパートナーシップ制度の導入を始めました。現在は全国100以上の自治体に制度は拡大。兵庫県内では16年の宝塚市を皮切りに、今年4月までに明石市、猪名川町など8市1町で導入されています。
 このうち、阪神間の7市1町は4月、当事者が自治体間で転居した場合、再度の手続きを簡略化する協定を結びました。全国でも人口計約175万人に上る広域の隣接自治体が同時に結ぶのは初めてといいます。
 カップルが受けられるサービスは各自治体によって異なります。市営住宅の入居申し込みが可能になるのをはじめ、民間の携帯電話や生命保険の契約などでも、家族の証明として認められる場合があります。
 しかし、法的効力はありません。税制面の優遇措置や相続など、配偶者としての権利を行使することはできないのです。

■日本の法整備 世界に遅れ
 今年3月、札幌地裁で同性同士の結婚を認めない民法などの規定は、法の下での平等を定めた憲法14条に違反するとの判断が示されました。「性的指向に基づく、不合理な差別に当たる」とし、国は法整備の検討を迫られていると言えます。
 同性婚は世界では01年に初めて、オランダで法制化されました。日米欧の先進7カ国(G7)ではアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダが認めています。イタリアは、同性カップルに結婚と同様の権利を認める制度を導入しています。
 日本では超党派の議員連盟が性的少数者への理解増進を図る法案の成立を目指していましたが、自民党の一部議員から異論があり、今国会提出は見送られる見込みです。日本は遅れている状態なのです。

■LGBTからLGBTQ+へ
 LGBTは女性同士の同性愛者(レズビアン)、男性同士の同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)、出生時の性別と自己認識の性別が異なる人(トランスジェンダー)の頭文字を取っています。言葉の浸透に伴い「当てはまらない性もある」とすべての性的少数者を示す「LGBTQ+」が新たに用いられるようになりました。
 Qは、クエスチョニング(性的指向が分からない、決めたくない)、クィア(性的少数者を包括する言葉)の頭文字。+(プラス)は他にも多様な性があることを表し、性にはグラデーションがあり、生きているうちに変わることもあるのだという意味も込められています。

■教えて!先生「まずは教員向けの研修を」性的少数者の調査を行ってきた宝塚大学看護学部教授・日高庸晴氏
 過去の調査から、LGBTなど性的少数者の子どもたちは、異性愛者に比べていじめ被害や不登校、自傷行為、自殺未遂に至る危険度が高いことが分かっている。子どもの命を守るためにも学校の授業で教えることは不可欠だが、まずは教員向けの研修を行うことが急務だ。
 2019~20年、全国の教員約2万1千人を対象に意識調査を実施したところ、大学時代や教員になってから研修などで同性愛と性同一性障害について学んだ経験があると回答した人はわずか3.1%だった。教員に心得や関心がなければ、当事者である子どもの存在に気付かない恐れがある。研修に加え、教員免許の取得の際に性的少数者の人権課題を必修科目にすることも検討すべきだ。
 性的少数者について学ぶことは、知らないことによって意識せずに人を傷つけてしまう行為を防ぐことにつながる。しかし、知識だけで人の心は動かない。学校では子どもたちに多様性の大切さをポジティブに伝え、互いの個性を尊重し合って社会をつくっていくことの重要性を教えてほしい。

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