連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

山口組分裂騒動

  • 印刷
山口組総本部に入る関係車両。この日、離脱派への処分を決める会合があったとされる=27日、神戸市灘区篠原本町4
拡大
山口組総本部に入る関係車両。この日、離脱派への処分を決める会合があったとされる=27日、神戸市灘区篠原本町4

 国内最大の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区、構成員約1万人)は、有力団体「山健組」(同市中央区、同約2千人)など十数団体が脱退と新組織設立に動き、実質的な分裂状態に入った。捜査関係者らによると、山口組執行部の情報統制は厳しく、騒動の背景をめぐってはさまざまな臆測が飛び交う。対立が強まれば、大規模な抗争に発展する恐れもあり、兵庫県警など全国の警察当局は警戒と情報収集に全力を挙げている。

【主導権争い】

 「6代目の考え方にはついていかれへん」

 分裂の動きが表面化した27日。山健組幹部が外部に語ったとされる離脱の動機には6代目山口組、篠田建市(通称・司忍)組長の組織運営に対する強い不満がにじんだ。

 山健組は5代目山口組組長(故人)の出身母体で、先代の在任中は圧倒的な存在感を示した。ところが、2005年に6代目体制に移ると、名古屋市に拠点を置く篠田組長の出身母体「弘道会」(構成員約千人)の影響力が一気に高まった。

 例えば人事。ナンバー2の「若頭」など重要ポストに弘道会出身者を次々と引き上げる一方、執行部に批判的とされた組長らは容赦なく切り捨てた。忠誠心を試すかのように、傘下の組長を全国から神戸の総本部に頻繁に呼び寄せるなどし、重い経済的負担を生じさせたのも不満の種となった。

 多くの捜査関係者は、こうした状況が山健組を中心とする「関西」系の直系組長らと「名古屋」系との亀裂を深めたとみる。

【情報が交錯】

 ただ、かつての“本流”が、なぜこのタイミングで組織を割って出るのかは判然としない。暴力団事情に詳しい関係者の間でも実際に分裂に動くことには懐疑的な見方があったが、ある捜査員は「情報をつかんだ今月下旬以降、緊迫感が一気に増した」と明かす。

 「総本部を神戸から名古屋に移す」とした弘道会側への反発や、山健組幹部の降格人事の動きが引き金とも言われるが、県警幹部は「いずれも現段階では風評にすぎない。慎重に見極める」と語る。

 離脱して新組織に加わる直系団体の数をめぐっても「11」「13」「15」「18」「22」など情報が二転三転し、激しい駆け引きが繰り広げられたことをうかがわせた。

 情勢の見極めが難しい背景には、警察当局に対し「会わない」「事務所に入れない」「情報を出さない」の“3ない主義”を徹底する6代目体制の特質もある、と捜査関係者は言う。

【抗争を警戒】

 警察当局が警戒するのは、分裂に伴う抗争だ。山口組ではかつて、4代目人事に反発した勢力が独立して一和会を結成。双方が対立した「山一抗争」(1985~87年)では全国で銃撃などが相次ぎ、民間人を含め100人近くが死傷した。

 一方で、暴力団を取り巻く状況は暴力団対策法(92年施行)の度重なる改正や、各地で制定された暴力団排除条例などでより厳しくなっている。捜査員は「抗争はリスクが高く、かえって組織の弱体化を招くと暴力団も承知しているはず」とするが「あらゆる事態を想定し、最大限の警戒を続ける」と力を込める。

 9月1日には山口組総本部で直系組長による定例会が予定され、緊迫した局面を迎える可能性もある。警察庁は翌2日、暴力団対策を担当する全国の捜査幹部を集めて緊急会議を開く。

2015/8/30