デブ猫

マルと記憶の庭②【かなしきデブ猫ちゃん 広島編第2弾】

2026/08/16 05:10

 ポギーにれられ、オレはすぐにウワサの黒猫くろねこいにいった。



 黒猫くろねこは〈縮景園しゅっけいえん〉という庭園ていえんでボンヤリとびていた。



 とてもキレイなメスだった。顔立かおだちやくろ毛並けなみがうつくしいだけでなく、気高けだか雰囲気ふんいきというか、優美ゆうびさをかんじさせた。



「こ、こんにちは。オレはマル。三歳さんさいのハチワレだよ」



 それこそ絵画かいがなかからしてきたかのような気品きひんにひるみながら、オレのほうからこえをかけた。



 黒猫くろねこ身体からだふるわせ、おそるおそるオレをつめた。



わたしは……自分じぶん名前なまえがわからないの。黒猫くろねこであることしかわからない」



 ポギーがこまったように「とりあえずぼくたちはノアールってんでるよ。“くろ”という意味いみ言葉ことばなんだ」とかたをすくめた。



 オレは「となりにすわってもいい?」と許可きょかてから、ノアールのよここしろした。




 不安ふあんそうなかおをするノアールに、オレはあらためて質問しつもんする。



かえ場所ばしょがわからないって、どういうこと?」



 ノアールは不思議ふしぎなことをくちにした。



わたしにもよくわからないの。ただ、自分じぶん居場所いばしょがここじゃないということだけはわかってる」



居場所いばしょ?」



わたし全然ぜんぜんちが場所ばしょんでいた。でも、それがどこかはわからない。なぜか記憶きおくのこってない」



おぼえていることはひとつもない?」



 ノアールはたよりなくくびをひねった。



ひとつだけ記憶きおくにある景色けしきがある。わたしはどこかのにわにいた。みどりゆたかで、キレイなはないていて、おおきな建物たてものがあって、わたしはそのおおきなにわ自由気じゆうきままにあそんでいた」



記憶きおくにわ--」



 オレはボンヤリとかえした。あまりにもヒントがすくない。そんなにわほしかずほどあるだろう。いまいる縮景園しゅっけいえんだってそのひとつだ。



 ノアールもきっとそれをたよりに、ここをたずねたにちがいない。



 ノアールの不安ふあんそうな横顔よこがおていたら、オレはおもわずわらってしまった。



大丈夫だいじょうぶ。そのにわ、オレがかならつけす」



 ノアールのひとみかがやいた。オレはおおきくうなずいた。



なやんでたって仕方しかたがないよ。まずは情報集じょうほうあつめからだ。期待きたいしてていいよ、ノアール」


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