2022
2022年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。
受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、努力賞にはニコンイメージングジャパンから副賞の撮影用品が贈られます。
表彰式は3月10日、神戸新聞本社で行います。
大西敏晴
11月二席
ため池の多い地元にはコウノトリがよく飛来します。この日も職場近くに数羽がいたので、自宅へカメラを取りに戻り、望遠レンズで狙っていました。そこへ、下校中の小学生が通りかかりました。足を止めて出合いに喜ぶ子らに、コウノトリが「おかえり」と言っているようにも見えます。めったに見られない光景です。児童の表情がよく、そちらにピントの合った写真を選びました。20代で写真を始めました。風景が好きで、妻と全国各地を訪ねます。夜明けの神秘的な光で撮るため、真夜中に出かけることもしばしばです。あの空気を肌で感じるのが楽しくて、行きたくてたまらなくなるのです。見たい景色はまだいくらでもあり、意欲は尽きません。
木藤将人
2月一席
昨年は47回。通算で500回ぐらい。兵庫県最高峰の氷ノ山(養父市、標高1510メートル)に登った数です。周囲360度に広がる雲海や「スノーモンスター」と呼ばれる樹氷群と太陽柱など、さまざまな自然現象を見てきました。あの日は天気が良く、星空と樹氷を撮ろうと三脚も持って登りました。山頂近くには午前5時半ごろ到着。星を撮れる時間はあとわずかです。長時間露光で撮った中に何枚か、流れ星が写っていました。狙って撮れるものではなく、いい条件が重なりました。どんな景色が見られるか行ってみないと分からない。だからまた登ってしまうのです。
川口勉
10月一席
生駒山の山頂付近にある電波塔群と朝日を絡めたいと、昨年10月、午前6時前に西宮市の東六甲展望台に登り撮影しました。狙いのチャンスは年に2回ほど。毎年同じ日に撮影できるわけでもないので、成功するまでに約4年かかりました。普段から空にあるものに興味があり、夕日や月、夜空などを撮影してきました。今回はグリーンフラッシュも偶然見られてラッキーが重なりました。今回の賞は4年越しの苦労が結ばれて本当にうれしく思います。自然現象を相手にすると失敗も多いですが、地道に努力してきたのでぴったりの賞がいただけて満足です。
髙橋秀治
2月二席
明石市の住宅街の一角で酪農を続ける「伊藤牧場」を神戸新聞で知り、撮影させてもらいました。結婚し、子どもが生まれたのをきっかけに人を撮影することが好きになりました。最近は働く人の姿を届けたいと思い撮影しています。写真は同牧場からの帰り際に「生まれそうだ」と教えてもらい撮影しました。まさか出産に立ち会えるとは思わず、夢中でシャッターを切りました。普段から写真を通じて何を伝えたいかを考えて撮影しています。個展の開催や写真集を出版するのが目標で、今回の受賞を励みにもっと上を目指していきたいと思います。
▼人と生き物の接点愛情深く表現
年間賞は12月の受賞作決定後、月例コンテストの一、二席24点から、1次審査として映像写真部デスクが候補作を12点に絞った。2次審査では、編集局の局長、局次長、各部長ら13人を審査員に、1位から順に4点、3点、2点、1点を配して投票。加点方式で4作品を決定した。
1位票を多く集めた大西敏晴さんの「おかえり」が最優秀に選ばれた。近年、秋になると東播磨地域に飛来するコウノトリの姿を、下校する児童と重ねるように撮影したことで身近なニュースに引き寄せた。生き物と子どもたちが心を通わせるような願いが画題からも伝わる。
星空を背景に、厳冬の氷ノ山で見られる樹氷群を撮影した木藤将人さんの「星降る夜」が優秀賞に。撮影技術だけでなく登山経験に裏打ちされた1枚が光った。
努力賞は川口勉さんの「電波塔群に昇る朝日」を選んだ。超望遠レンズを使った大胆な表現に加えグリーンフラッシュという日の出と日没時、まれに見える光も執念で写した。
奨励賞の髙橋秀治さんの「新たな命」は、牛の出産に立ち会った感動をありのままに撮影し、生命誕生の喜びを表現した。
次点は木原聡さんの「光りの共演」だった。
ロシアのウクライナ侵攻や物価高による家計の圧迫など、この1年は長引くコロナ禍に加えて暗く重たいニュースが世の中を覆いました。しかし、月例作品をふり返ると閉塞感を吹き飛ばすような多彩な写真でいっぱいでした。
マスクを着けながらも日々の暮らしを楽しむ姿や、二度とは巡り合えない情景を写し撮ろうとする熱意が1枚、1枚から伝わります。とりわけ、えりすぐりの4作品からは自然の荘厳さと人の営みがもたらす温かさを感じずにはいられません。カメラを持ち出し、被写体にレンズを向けてシャッターを切ることはエネルギーの必要な作業です。みなさんの思いが込められた作品から力をもらう1年でした。
高性能なデジタルカメラが普及する一方で、スマートフォンで感じたままに写真を楽しむことも身近になっています。2022年の応募総数は4500点でした。何げない1枚が、人々の心を揺さぶる可能性を秘めています。感動をぜひ写真にして伝えてください。
(映像写真部長 藤家 武)