買い物難民、移住夫婦支え 淡路市でも移動スーパー展開 洲本の「マイ・マート」

2021/06/01 05:30

マイ・マートの店舗で、移動スーパー「とくし丸」のチラシを持つ野崎敏郎さんと裕子さん夫婦=淡路市中田

 地場スーパーのマイ・マート(兵庫県洲本市納)は、洲本市と南あわじ市で展開する移動スーパー「とくし丸」を淡路市でも始める。過疎地で買い物難の高齢者らを支えるサービスで、東京から移住した夫婦が販売員を担う。7月15日からのスタートに向けて準備し、「早く皆さんに会いたい。始まるのが楽しみ」と意気込み十分だ。(中村有沙) 関連ニュース 「買い物弱者」を無料送迎、コープこうべが高齢者らサポート 加西店でスタート 相乗りで「ちょっとそこまで」 福祉送迎車でランチや買い物も 高齢者の新たな移動手段に 豊岡 「観光に不可欠」「交通弱者に配慮を」赤字初公表のJR播但、山陰線 利用者らは減便懸念


 同社は4年前、移動スーパーを始めた。徳島県内で移動スーパー事業を手掛ける小売会社とくし丸(徳島県)と提携してノウハウを吸収。軽トラックに生鮮品や総菜、日用品などを積み、週に2回、利用者宅を訪問して商品を販売する。
 洲本市、南あわじ市の順に地域を拡大した。利用者は増え続け、現在約600人。昨年以降、新型コロナウイルス禍による外出自粛で、さらに需要が高まっているという。淡路市では、佐野、塩田、志筑、一宮を中心にコースを設置する計画だ。
 販売員は、大阪府豊中市出身の野崎敏郎さん(52)と西宮市出身の妻裕子さん(55)。マイ・マートから委託を受け、2人で回る。
 敏郎さんは今春まで21年間、大阪の水産品加工販売会社に勤めていた。若いころから漠然と田舎暮らしへの憧れがあったが、子育てや仕事に忙しくて実現しないまま、40歳を過ぎて東京へ転勤となった。夫婦で移り住み、12年間暮らした。
 5年前、50歳を前に今後の暮らしを考えるように。親や独立した子どもや孫は関西に住み、すぐには会えない。昨年3月以降、新型コロナウイルス禍で疎遠になる不安がさらに強まり、関西に戻ることを決めた。
 そのとき思い出したのが、夢だった田舎暮らし。海が好きな敏郎さんが「海が近く、子どもにもすぐ会える場所がいい」と淡路島への移住を発案した。
 昨夏、仕事を探すため島を訪れ、たまたま立ち寄ったマイ・マートの店舗に「とくし丸販売員募集」の張り紙を見つけた。「人に感謝される仕事」「定年後のあなたにもできる」。そんなフレーズにひかれ、とくし丸が主催するウェブ説明会を視聴した。
 そこで初めて、公共交通機関の乏しさなどから、買い物に出掛けるのが難しい高齢者がいることを知った。東京では徒歩数分でスーパーなどがあり、買い物に困るという発想がなく、驚いた。「おじいちゃん、おばあちゃんの笑顔を守りたい」とマイ・マートへ連絡し、販売員になることを決意した。
 会社を退職し、4月から淡路市内で暮らす。地域を1軒1軒回って、利用者を募っている。「移動スーパー、待ってたよ」「無理して車を運転する必要がなくなる」と喜ぶ人も多く、「すでにやりがいを感じている」と話す。
 移動スーパーは、独居高齢者らを見守る役割もある。東京ではデイサービス施設で働いていた裕子さんは「日々会話する中で、顔色の変化などにも注意したい。前職の経験を生かせたら」と話す。いずれ2人で2台のとくし丸を走らせることを目標にしている。

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