漁師「みな恩恵受けた」 航路の安全守り150年、江埼灯台国重文指定へ 兵庫・淡路

2021/11/20 05:30

夜間に赤色と白色の光を発する灯室の中心部=淡路市野島江崎

 江埼(えさき)灯台(兵庫県淡路市野島江崎)が国重要文化財になる。建造物では淡路島内初。1995年1月の阪神・淡路大震災で壁面の石積みがずれた痕跡が残るものの、完成した1871年から姿を変えず、現役の灯台として動き続ける。地元住民は指定を歓迎し、漁師は感慨を口にする。 関連ニュース 【写真】夜間に赤色と白色の光を発する灯室の中心部 【写真】はしごで灯室に上がる階段室 解体工事中の観音像から“ビーム”が!? その正体は…


 淡路市内では、東山寺(長沢)にある木造薬師如来立像と木造十二神将立像が1940年に指定されて以来、81年ぶり3件目。島内ではこのほか、同県洲本市に甲冑(かっちゅう)など3件、南あわじ市に銅鐸(どうたく)など6件ある。
 江埼灯台は、震災で露出した野島断層の間近にある。激震によって、家島産の御影石でできた壁面の石積みが最大約4センチずれた。修復を経た現在も出っ張りが残る。灯台を運用する神戸海上保安部の狩野宏交通課長は、「設計者の英国人技師が日本の地震の多さを知り、重さがあって揺れに強い石積みを採用したと聞いた。震災で大きく崩れなかったのはそのおかげかもしれない」と話す。
 毎年11月の公開日以外は立ち入れないが、地元の江崎町内会で会長を務める向田久さん(68)は、「すぐそばまで夕日の写真を撮りに来る人がいる。(国重文指定で)全国から注目されたらうれしい」と話す。
 夜間に赤色と白色の光を交互に発する。播磨灘の浅瀬「鹿ノ瀬」は常に赤く照らし、危険を知らせる。淡路市の漁師の男性(81)は「船乗りはみな恩恵を受けた」と話す。約10年前まで操業した夜の底引き網漁で見慣れ、「(衛星利用測位システムの)GPSが発達して頼らなくなったとはいえ、価値が認められたことは漁師としてもうれしい」と語る。
 同市教育委員会は「一般向けの指定の周知や観光利用について関係機関で調整したい」としている。(中村有沙、内田世紀)

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