父が市長選立候補、応援した大学生 インスタ更新、朝のつじ立ち…実感した「未来考えた投票」の大切さ
2022/03/16 05:30
選挙運動で使ったオレンジ色のジャンパーを持つ氏田かのこさん=洲本市上物部2
兵庫県洲本市の大学生氏田かのこさん(22)は、6日に投開票があった洲本市長選挙で、父で元市議の氏田年行候補(53)の選挙運動に参加した。双子の妹とともに朝のつじ立ちを続け、写真共有アプリ「インスタグラム」の更新を担当。終盤は演説でマイクを握った。政治への関心が薄いといわれる若い世代。戦いを終え、「街を好きでいるために大事な機会だと思った」と話す。(中村有沙)
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氏田候補は2010年の市長選で新人だった竹内通弘市長に敗れて以来、2度目の挑戦だった。昨年11月に竹内市長が3期12年での退任を表明。氏田候補は12月に立候補の意向を明らかにした。
「2~3月は帰ってきてほしいと、秋ごろに言われていました。出るんだろうなと。選挙の時期は、神戸の大学を出て社会人になる直前で手伝いやすいタイミングでした。物心ついた時に父はすでに市議で、12年前も市長選に出ていたので、父の立候補と応援することに戸惑いはありませんでした。関心が薄いといわれる同世代から冷ややかな目で見られるかもしれないとも考えました。それはそれで仕方ない、やるからには最後まで見届けたいと思いました」
2月1日に帰省後、朝のつじ立ちを始めた。インスタグラムで選挙運動用のキーワード「#(ハッシュタグ)洲本市に新しい風を」「#洲本市を変えるのは今です」をつくり、若い有権者にアピールした。
「つじ立ちは、土日以外の毎日。あまりの寒さに正直しんどいと思うこともありました。それでも続けると、深く会釈を返してくれる方がたくさんおられた。人の心を動かすのは、こういう地道な活動なんだと感じました。インスタグラムの#は、淡路島内の他の2市に比べて埋没感がある洲本市を変えたいという父の思いを簡潔に表現しました。投稿文に付け、写真や動画にも大きく表示し、何度も目に入るようにしました。ふとした場面で父が見せる笑顔の写真も載せました」
選挙戦は、氏田候補を含めて新人3人の争いとなり、子育て支援や産業活性化などの訴えを繰り広げた。
「同級生が『インスタ見てるよ、頑張って』『手伝いにいくよ』と、興味を持ってくれました。想像以上の反応で驚きました。インスタ効果かもしれません。最初は、自分が演説するなんて考えもしませんでした。勝ってほしいという気持ちが日に日に増し、一番近くで候補者を見てきたから言えることがあるのではと、最後の2日間、マイクを握りました」
迎えた投開票日。元副市長の上崎勝規候補(66)が初当選し、善戦の氏田候補は一歩及ばなかった。投票率は06年に旧洲本市と旧五色町が合併した後の市長選で最低の50・64%だった。
「落ち込みますが、全てやり切ったので後悔はないです。つじ立ちを欠かさず続け、相手の非難ではなく自身の夢を語る。そんな戦い方を学びました。投票率の低さは、必死に活動しただけにショックです。元々、政治に強い関心があったわけではありません。選挙運動に関わり、未来がどうなるのか考えて票を投じる大切さを感じました。4月から東京に本社を置く総合商社で働きます。地元を離れますが、今後の選挙で、社会への自分の希望は何か、候補者は何を訴えているのか、しっかり考えて行動しようと思います」