女性3代で再出発、80年続いた鮮魚店が喫茶店に 手作りケーキも人気「住民が集える場に」

2022/08/10 05:30

鮮魚店を営んだ濱田佐代子さん(右)、再出発の喫茶店を切り盛りする三幸さん(中央)、晏奈さん=淡路市郡家

 兵庫県淡路市郡家で約80年続き、5年前に閉店した鮮魚店「魚栄(うおえ)」が今夏、喫茶店「きっさうおえ」として再出発した。店主だった濱田佐代子さん(74)の長女三幸さん(53)と、孫の妻の晏奈さん(29)が切り盛りする。ケーキや総菜を中心に、鮮魚店時代に評判だったという自家製の調味酢も販売。女性3代で「住民が集える場所に」「歴史をつなげていきたい」と歩む。(中村有沙) 関連ニュース 【写真】「Fish Shop」の文字を残した外観 戦前から営業の鮮魚店、惜しまれ閉店 「魚だけ売るのが仕事やない」4代目の夫婦、地域との触れ合いも大切に 姫路名物のアーモンドトーストなど多彩なメニュー 新幹線改札内に喫茶店オープン


 鮮魚店「魚栄」は1936年に同市志筑で創業し、4年後に郡家に移った。佐代子さんは2代目店主だった泰明さんの妻。夫婦で店を営んだ。
 約30年前、泰明さんは病気のため47歳の若さで亡くなった。店をたたもうと考えたが、亡くなる前に自身の死を悟ってか、熱心に魚の仕入れを教えてくれた姿が目に浮かび、店主となることを決意した。
 それ以来、親族の手を借りながら、営業を続けた。近年は次第に漁獲量と品数が減少して仕入れに苦心。「愛されているうちに」と、2017年に閉店した。
 ところが、それまで休みなく働いていた佐代子さんは、時間に余裕ができると過ごし方がわからず、気落ちすることが多くなり、不安症を患った。
 三幸さんが、喫茶店の開業を考えた。佐代子さんがコーヒーが好きで、晏奈さんが菓子作りが得意だからだった。「周囲に喫茶店はなく、住民が集える場所になれば地域のにぎわいに貢献できる。母も接客したほうが落ち着けるのではないか」という。
 「きっさうおえ」は6月に営業を始めた。店内を改装し、外観の文字「Fish Shop」はそのままにした。
 晏奈さんが、チーズケーキやモンブランなどの手作りケーキを日替わりで出す。東京や大阪のカフェでスイーツ作りを手伝い、結婚して淡路島に戻った後も趣味で続けていた。「いつか仕事にできたらと思っていた。家族の一員として、この店を残していきたい」と話す。
 調味酢は三杯酢(350ミリリットル入り350円)と、すし酢(同500円)の2種類。純米酢をメーカーから仕入れ、砂糖や塩などを独自の配合で混ぜ合わせる。泰明さんがすし店もした時期に作っていたものを、佐代子さんが引き継いで販売してきた。喫茶店では、ランチの主力メニューのチキン南蛮(1200円)に、この三杯酢を使っている。
 他に、家庭の食卓を手助けしたいという思いを込め、ポテトサラダやホウレンソウのごまあえなどの総菜をテイクアウトで販売する。
 佐代子さんは毎日、店に出る。「鮮魚店の頃を思い出しながら、できる範囲で働きたい。店を続けてくれる娘と晏奈さんに感謝。主人も喜んでいる」と話している。
 午前11時半~午後6時半。日、月曜定休。きっさうおえTEL0799・85・0045

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