<フェス主義!>市民が手作り、入場無料…独自路線の「グリーンジャム」再出発 9月18、19日

2022/08/31 17:00

コロナ禍前の2019年に開かれた「ITAMI GREEN JAM」=昆陽池公園(実行委員会提供)

 関西最大級の無料ローカルフェス「ITAMI GREEN JAM(イタミグリーンジャム)」が、今年は大阪府池田市の猪名川運動公園に会場を移し、9月18、19日に「GREEN JAM」として3年ぶりに開かれる。有名アーティストのみならず、地元のクリエーターや子ども、ママ、パパが自由に表現を楽しむ場は、地域の祭りや文化祭のようでもある。独自路線のフェスが再出発する。 関連ニュース <フェス主義!>「グリーンジャム」は年に1度の「僕たちの文化祭」 実行委員長・大原智さん 「イナズマロック」に寄せる思い 主催の西川貴教、大いに語る 尼崎レゲエシーンの新展開に注目せよ


 関西屈指の渡り鳥の飛来地として人々に親しまれている兵庫県伊丹市の昆陽池(こやいけ)公園。この公園を会場に、地元の若手クリエーターらが2014年に始めたのがグリーンジャムだ。
【プロに頼らず】
 800人を超える市民が「つくり手」として関わる。企画や運営、会場設営、装飾などをプロに頼らず、大半は自力で行う。さらに盆踊り団体や小中学校の吹奏楽部、キッズダンサーなどが練習の成果を披露したり、飲食やファッション、アートなどの出店をしたり。子どもが遊べるエリアも設け、ファミリー層の来場も多い。
 過去のステージには、PUFFYやスチャダラパー、七尾旅人ら有名アーティストから実力派、若手までが出演。コアな音楽ファンからも注目を集めてきた。
 「いろんな人たちの表現によって成り立っている『市民祭り』なんです」。実行委員長で、現在は同市を拠点にイベントの企画制作などをする一般社団法人GREENJAM代表理事を務める大原智さん(38)はそう語る。「ライブに夢中の音楽好きもいれば、ステージに背を向けて水遊びをしている子もいる。その多様性に僕自身がひかれた」
 14年、初開催のローカルフェスとしては異例の1日約6千人を集客。15年は約1万人。年々増え、19年には2日間で延べ約2万5千人を集めた。同年の開催費は約1800万円。初回の10倍に膨らんだが、協賛金や出店料などでまかない、ローカルフェスの成功例として熱い視線を浴びてきた。
【移転の決断】
 新型コロナウイルス禍では市が管理する昆陽池公園の使用が難しく、20年は会場を市内3エリアに分散し「ITAMI CITY JAM」として開催。21年は準備を進めていたものの「時期未定の延期」を余儀なくされた。
 「とにかく悔しかった」と大原さん。感染拡大防止のため行動が制限され、表現する場、グリーンジャムが大切にしてきた「多様性」が社会から失われていると強く感じていた。
 だからこそ、「今年は絶対にやりたい」。3月には市に、半年後の公園使用を打診。感染状況の先行きが見えず「判断が難しい」と回答があったため、近隣で候補地を探し、池田市から猪名川運動公園の使用許可を得た。
 入場無料は続けるが、ライブエリアは事前登録制に変更。神戸ゆかりのガガガSPや、真心ブラザーズ、eastern youthなど約30のアーティストが出演し、飲食やアート、プログラミング体験など約90の多彩なブースも並ぶ。出演者や来場者の声を集めて新聞を作る「子ども取材チーム」も活動予定だ。
 一方で連日、池田市内の団体や企業、店舗を回り、参加や協賛の呼び掛けに汗を流す。伊丹市で、同じように奔走した日々を思い起こしながら。
 「来場者数や経済効果が大事なことは理解している。でも、自分の意志でつくり手になって何かしようとする『内部熱』こそ、地域活性化の本質だと思うんです」。幅広い世代や職業の人たちが集い、新生グリーンジャムが始動する。
(藤森恵一郎)

■企画協力【Festival Life(フェスティバルライフ)】津田昌太朗さんが編集長を務める、日本最大級の音楽フェス情報サイト。全国で開催される400以上のフェスリストのほか、国内外のフェスに関するニュース、インタビュー、コラム、来場者スナップ、リポートなどを配信する。

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