歴史大作「蒼穹の昴」にかける思い 宝塚雪組・彩風咲奈「運命は変えられる」
2022/09/19 11:00
歴史大作「蒼穹の昴」に挑む彩風咲奈=宝塚大劇場(代表撮影)
宝塚歌劇が浅田次郎のベストセラー小説「蒼穹(そうきゅう)の昴(すばる)」を舞台化、雪組が総力を挙げて挑む。清朝(しんちょう)末期19世紀末の中国で展開する壮大な歴史ドラマ。トップ、彩風咲奈(あやかぜ・さきな)が歴史の波にもまれながらも、自らの知力で未来を切り開く主人公、梁文秀(リァン・ウェンシウ)を演じる。「今まで演じてきた中で最も『辛抱』を強いられる役」といい、稽古の毎日だ。
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老占い師に「汝(なんじ)は学問を磨き知を広め、帝(みかど)を扶翼し奉る重き宿命を負うておる」と予言された地主の次男、文秀(彩風)は科挙の試験に首席で合格。政府中枢で改革派として名をはせる。一方、かつて義兄弟の契りを交わした李春児(リィ・チュンル)=朝美絢(あさみ・じゅん)=は「その手にあまねく財宝を手にするだろう」という老占い師の言葉に夢を託して故郷に妹・玲玲(リンリン)=朝月希和(あさづき・きわ)=を残し、宦官(かんがん)になって最高権力者、西太后の側近にまで昇りつめる。
演目が決まってから原作を読み込んだ彩風。「苦しさ、つらさの数々を乗り越えて生きなければならない」文秀の人生に思いをはせた。特に好きなところは今回の台本にはないが、帝から「本来の自分を出しなさいと告げられる場面」だという。「男役として作り上げてきたものに加え、自分の思いも出していいと言ってもらった気がした」。
「主人公の破天荒な部分を前半で強めに出し、後半の壮大な政治的物語につなげたい」とプランを練るが、真情を吐露するせりふはほとんどなく、身ぶり手ぶりもあまり使わず、まっすぐ立って歌い、演技することが多い。「エリートとしての見た目、立ち姿をしっかり印象づけるのに苦心している」と明かす。
物語には「運命、宿命を変えられるのが人間の力」という強いメッセージがある。1月、東京での公演が中止になった「オデッセイ」を7~8月、大阪で上演、完走して、意志の強さが大切だと痛感した。「絶対にやってやる、私たちが希望の船になるという思い。強く思い努力すればかなう」
本作を最後に退団が決まっている娘役トップの朝月とは「これが最後と思うのではなく、最後までいいものを作ろうという思い」で臨んでいる。未来はどうなるかわからないが、清国を逃れて日本に亡命し、これからも力強く生きていこうとする玲玲の姿が「朝月のこれからと重なる。この作品で最後というのは、ある意味、運命的なのでは」とメッセージを送る。
「トップ就任以降、漫画が原作、時代劇コメディーなど、ハートフルなライトタッチの作品が続いたので1本物の歴史大作に挑めるのはうれしい」と強く語っている。
「蒼穹の昴」は10月1日~11月7日、宝塚大劇場で。同26日~12月25日、東京宝塚劇場で上演。
(片岡達美)