全国で70万人動員、ソビエト映画の傑作「戦艦ポチョムキン」 高揚と衰退、上映運動の実態を一冊に

2022/10/25 11:30

「『戦艦ポチョムキン』自主上映運動再考」

 神戸映画サークル協議会(神戸映サ)の元委員長・塩見正道さん(71)=兵庫県尼崎市=が「『戦艦ポチョムキン』自主上映運動再考」=を出版した。 関連ニュース 元組事務所、使い道ない「なら映画館にしたら?」 ヱビスシネマ誕生秘話が銀幕に 兵庫・丹波 プロになって1年未満、アジア最大級の国際短編映画祭で入選 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン、公道を快走! 神戸の男性2年半かけ完成


 「戦艦-」(1925年)は、水兵の革命的反乱を斬新な表現で描いたソビエト映画の傑作。戦前の日本では検閲により公開されず、59年2月に横浜から自主上映が始まると、全国で70万人を動員したとされる。
 神戸映サも関わり、神戸では同年5月に上映。塩見さんが、当時の会員が残した機関紙や手紙などを見つけて読み込むと、「伝説化された運動の実態が見えてきた」という。
 そもそも初上映は、横浜映サの年間ベスト発表会の関連イベント。前年に発足した「上映促進の会」の主導ではなかった。この会自体、配給側が始めたもの。会費を集めて映画館を借りた自主上映でも、実際は映画館がお膳立てをしている「興行」に等しいケースがあったと指摘する。
 「各地で上映の形は異なり、自主上映といえるのは関西くらい」と塩見さん。だが、京阪神でも映サと労働組合系団体(労映)、別の鑑賞団体の間には「温度差があった」。組織の理念や性格の違いによる対立や主導権争いを、議事録や連絡文書から明らかにした。
 「戦艦-」は多数の観客を動員したが、高揚が続かなかったのは「『この映画を見たい』という要求が後回しにされていた」からだと分析。「鑑賞団体に携わる一員として、今でもそこが一番大事にすべき点だと伝えたい」と話す。
 風来舎刊。1430円。出版記念の上映会を来年1月28日、神戸映画資料館(神戸市長田区)で予定。神戸映サTEL078・371・8550
(田中真治)

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