急逝した舛次崇さんの個展「静かなまなざし」 西宮の絵画クラブで創作、代表作100点を兵庫県美で
2021/07/03 05:30
舛次崇さんが2011~14年に描いた作品群=神戸市中央区脇浜海岸通1、兵庫県立美術館
兵庫県西宮市の知的障害者らが通う「すずかけ絵画クラブ」で創作を続け、今年1月に46歳で急逝したダウン症の舛次(しゅうじ)崇さんの個展「静かなまなざし」が6日まで、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開かれている。仲間の富塚純光(よしみつ)さん(62)=西宮市=による個展「かたりべの記憶」も同時開催。国内外で高く評価される作家2人の約130点で、その魅力を伝える。(小林伸哉)
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同クラブは1991年、西宮市の絵本作家はたよしこさんが創設し、現在は社会福祉法人一羊会(同市)が「あとりえすずかけ」(同市馬場町)で運営。舛次さんと富塚さんは93年から参加し、その絵画は2009年、スイス・ローザンヌの美術館「アール・ブリュット・コレクション」に収蔵されて注目を集める。
西宮市で暮らした舛次さんは生涯で約500点の絵画を残した。下描きはせず、1日5、6時間熱中することも。パステルなどで描く静物画は、画面から題材がはみ出すような大胆な構図、絶妙な配色が魅力だ。今回は100点を厳選した。その中には阪神タイガースの大ファンだった舛次さんが甲子園球場を描いた初期作もある。
創作に立ち会ってきたスタッフの三栖香織さんは「舛次さんにしか描けないかたちがある。しっかりと存在感を放っている」。生前の展覧会で、そっと自作に触れて、たたずむ姿が思い浮かぶという。制作時の映像や、すり減ったパステルなどの遺品も展示。「そばにいてくれているようで、安心する」と懐かしむ。
富塚さんの作品は日記や自作の物語がテーマで、特に赤色を好んで使う。画面上のユーモラスな文章やギャグも楽しい。幅約8メートルの絵巻など30点を飾る。「舛次君と展覧会がしたい」との願いが、やっとかなった。
午前10時~午後6時。月曜休館。無料。一羊会TEL0798・31・1760