尼僧で落語家、露の団姫さんが新著 コロナ禍での奮戦軽やかに「お寺を建てる!」

2022/01/25 05:30

本尊の明星観音像の前で、著書を手にする露の団姫さん=尼崎市西長洲町2

 尼僧と落語家の「二足のわらじ」で知られる露(つゆ)の団姫(まるこ)さん(35)が、昨年7月に兵庫県尼崎市に開山した寺院「道心寺」建立を巡る物語を、「お寺を建てる! まるこの道心寺物語」として出版した。料亭だった物件との出合い、コロナ禍が突きつけた資金問題と改装工事の中断-。曲折を経て、迷い、悩みつつ「理想像」を求めてこぎ着けた寺院誕生までの道のりを軽やかな筆致でまとめた。(中西幸大) 関連ニュース 念願の寺が完成、心の充電の場に 落語家で僧侶の露の団姫さん 落語家の僧侶・露の団姫さん 尼崎市文化未来奨励賞に 女性落語家が急増「女の生き方、表現したい」 楽屋は男女別、演目に下ネタも


 学生時代から宗教に関心を寄せていた団姫さんは、両親の影響で興味があった落語家も志望。高校卒業後に落語修業、出家と経て、高座と布教を両立してきた。寺院構想のきっかけは、布教活動の一環として取り組んでいた悩み相談。メール相談が多かった中で対面相談の重要性や、急な相談者に対応できる場所の必要性のほか、僧侶仲間の勧めもあったという。
 漠然としていた構想は、2019年春に尼崎市内の料亭だった物件との出合いで一気に具体化。しかし、改装工事を始めようとしたところでコロナ禍が直撃した。落語家としての収入は9割減となり、寄進も鈍った。先行きが見えず、心が折れかけたこともあった。
 そんな心境の機微のほか、鳥居や教会を描いたふすま絵、防災拠点としておむつなど衛生用品の備蓄、高座を設けた本堂など、一から造り上げた寺院ならではのこだわりと思い、理想への模索を描いている。
 予定より1年以上遅れて誕生した寺院も「困った人の駆け込み寺」を目指し、端緒についたばかり。落語会以外にもイベントを充実させて、訪問しやすい場所にしたいとする団姫さんは、「失敗できないという思いからたくさん悩んだ。でも悩むことがいけないわけではない。自身がやりたいという意思の大切さを感じていただければ」と話した。
 四六判211ページ。1760円。各地の書店で販売中。春秋社TEL03・3255・9611

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