虐待、経済的困窮…家庭の代わりになる場所を 尼崎の団体が自立援助ホーム開設 15~20歳対象

2022/02/09 05:30

「若者たちがありのままの自分を出せる場に育てたい」と話す川西悦子さん(右)と野本亮一さん=尼崎市内

 虐待や育児放棄、経済的困窮で家庭にいられなくなった若い女性が共同生活を送る自立援助ホーム「若葉」が、兵庫県尼崎市下坂部地区にオープンした。家庭的な雰囲気の中でスタッフが食事を提供し、生活相談に乗るなどして一人一人の自己実現を後押しする。開設した団体の2人は「『ただいま』と帰ってこられる、安全で安心できる居場所をつくりたい」と意気込む。(竹本拓也) 関連ニュース 32歳で仕事辞め、認知症の祖母と脳梗塞の母介護 「ヤングケアラー」自らの体験発信 「学校に行かない」と決断するまで フリースクールの保護者が語った共通のメッセージ 深刻「ヤングケアラー」小学生も9人、学校に行けない 神戸市の窓口、44人支援 8割が本人以外から


 若葉は2階建て(5LDK)の一軒家で女性専用の施設。1階に台所や居間、2階に1人部屋と2人部屋が2室ずつあり最大6人が生活できる。1月21日の開設後に早速、高校生2人の入居が決まり、スタッフが交代しながら24時間態勢で常駐している。
 自立援助ホームは児童福祉法に基づく施設で、児童相談所を通じて原則15~20歳が入所する。県内では同県芦屋や伊丹、明石市などにあり、若葉は7カ所目。就学者は月2万円、就労者は食事や光熱費を含む月3万円の利用料を支払う。
 開設した尼崎市の一般社団法人「若葉」の川西悦子代表(53)は明石市で2人の子育てをしていた頃、深夜に出歩く友人の子どもの捜索を手伝ったのを機に子どもの夜間見守りを始めた。出会って話を聞くうちに、こう思い知るようになった。徘徊(はいかい)は本人に問題があるのではなく、親からの性暴力や貧困など複雑な家庭環境がある-。
 その後、児童養護施設や母子生活支援施設などで経験を積み、芦屋市の自立援助ホームで勤務していた副代表の野本亮一さん(65)と一念発起した。
 「誰かと一緒に温かいご飯を食べるのは久しぶり」「きれいな食器で食事できるのがうれしい」
 入所した高校生は既に3人になり、互いに打ち解けてスタッフらと日用品の買い物にも出掛けたという。川西さんは「3人とも『お帰り』や『行ってらっしゃい』の声に心から喜んでくれる。互いの下校を待ってからみんなで食事するのを楽しみにしており、温かい雰囲気になっている」と語る。
 川西さんと野本さんは私財を投じて開設にこぎつけた。支援者から布団や備品の寄付を受けながらも、運営資金が不十分といい、継続的な寄付を募っている。
 若葉への問い合わせは電話(TEL06・6409・4315)かホームページから受け付けている。

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