ボートレース尼崎、コロナ禍でも売り上げ最多の459億円 オンライン化、子供の遊び場も…「おっちゃんのオアシス」大変身

2022/02/15 05:30

ユーチューブのライブ配信番組。愛好者が順位を予想する様子やレースをライブ配信し、視聴者もコメントを書き込んでいく=ボートレース尼崎

 兵庫県の尼崎市と伊丹市が「ボートレース尼崎」(尼崎市水明町)で手掛けるレースの売り上げが好調だ。バブル期以降の「冬の時代」から一転し、尼崎市では2020年度の舟券売り上げが04年度以来最多の459億円に膨らみ、21年度もこれを上回る見込みだ。投票のオンライン化が進み、コロナ禍でも市場が拡大。近く発表される両市の当初予算案でも収益を活用した施策が増えそうだ。(竹本拓也、久保田麻依子、浮田志保) 関連ニュース 【写真】出走する選手たち=ボートレース尼崎 「まくり賞」創設、動画投稿…ボートレースファン開拓に奮闘 職員の1日に密着 姫路と園田の両競馬場が活況、売り上げ過去3番目に 巣ごもりで在宅投票急増


 公営ギャンブルは、売上金の75%が払戻金となり、残りから開催経費などを差し引いた分が自治体の財源になる。
 ボートレース尼崎のレースのうち、尼崎が主催するのは年130日で、伊丹は56日。伊丹は姫路、朝来市など5カ所の場外舟券売り場「ボートピア」を運営し、神戸・新開地の売り場は尼崎などが民間に業務委託をしている。
 尼崎市によると、事業の売り上げはバブル絶頂だった1991年度の1192億円をピークに減少の一途をたどり、2010年度以降は263億~380億円で推移。それが20年度になって前年度比85億円増の459億円と急増し、11年ぶりに400億円を超えた。21年度も勢いは衰えず、10日時点で既に440億円と前年度超えが確実となっている。
 伊丹市でも20年度の売り上げは約165億2600万円となり、前年度比10・5%増と好調だ。
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 「1-4-5来そう」「どうなる」「1-4の時は3が飛ぶことを願って2、5、6を3着に」…
 動画投稿サイト「ユーチューブ」にレースの実況中継が映しだされ、視聴者のコメントが書き込まれる。尼崎市が20年春からライブ配信を始めると、投票者が急増した。担当者は「コロナ禍でパチンコ店などに行けない分、在宅でレースを楽しむ人が増えているようだ」と手応えを語る。
 20年度を見ると、スマートフォンなどを使ってインターネットで舟券を買える「電話投票」の売り上げが316億円と前年度より113億円も増加。それは売り上げの約7割を占めて全体を押し上げている。
 伊丹でも同様の傾向にあり、20年度の電話投票は約116億円で、全体の7割を占めた。担当者によると、コロナの影響で主催する56日のうち11日が無観客試合となり、場外売り場も臨時休業を余儀なくされたことが背景にあるという。
 全国各地のボートレースも好調で「全国モーターボート競走施行者協議会」によると、20年度の売り上げは前年度比5520億円増の2兆951億円に上った。これは1991年の2兆2千億円に次ぐ水準という。
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 ボートレース尼崎は、戦後の復興財源を確保するため、1952(昭和27)年に尼崎が開設。当時の市長が競艇事業の生みの親である笹川良一氏と懇意だった縁もあり、湿地帯を埋め立てて完成させた。
 尼崎ではこれまでの売上金から財政に繰り入れた累積総額が約3360億円に上っている。市は高度経済成長期に市営住宅や学校、市民プールを次々と建設。しかし、90年代に繰入金は2億円を下回った。
 それが20年度決算では20億円に上り、新型コロナ対策に充てる財政調整基金を中心に、庁舎整備の基金にも回したという。
 伊丹市もこれまでの繰入総額は約718億円に上り、20年度は約6億円を小中学校の改修工事費や図書の購入費などに充てた。
 尼崎は回復の背景に、1991年に始めた電話投票に加え、イベント開催や会場内外の美化など、ファンサービスを意識した魅力づくりも挙げる。昨年秋にはフードコートや有料席をリニューアルし、4月には子ども向け遊び場が開園するなど女性や家族連れを意識した戦略も加速させる。7月には集客が見込めるSG(重賞)の開催も4年ぶりに決まった。
 担当者が言った。「かつては『おっちゃんのオアシス』と呼ばれた競艇場だが、イメージは着実に変わりつつある」

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