白煙、横滑り…激走のドリフトレース 圧巻の技術体感を 映画出演の現役レーサーが語る魅力

2022/05/24 05:30

ドリフト競技の魅力や映画のポイントを語る川畑真人選手=伊丹市藤ノ木2、TOYO TIRE本社

 タイヤを横滑りさせ、巧みなドライビングテクニックやスピードを競う「ドリフト」がテーマの映画「ALIVEHOON アライブフーン」が6月10日、全国公開される。内向的だがオンラインゲームでは驚異的な才能を発揮する主人公が、現実世界のドリフトチームに誘われてレースに挑む物語。実際のプロドライバーも出演する。 関連ニュース 「めっちゃ速いやんあの軽四!」車好きにはたまらないジムカーナとは F1タイヤ交換、最速タイムは1.82秒 未経験者は作業中にけがの恐れも 渋谷でピットストップを疑似体験 今なお人気を集める「空冷ポルシェ」…1964年式のポルシェ356に乗ってきた「まさに一生乗れるクルマ」

 同映画には、タイヤ大手・TOYO TIRE(トーヨータイヤ)=兵庫県伊丹市=も協賛に加わる。主人公・大羽紘一役は神戸市出身の俳優野村周平さんが務め、トーヨータイヤのドリフトチーム「Team TOYOTIRES DRIFT」所属の川畑真人選手(44)も本人役で登場し、圧巻のテクニックを披露する。今季の国内レースに参戦中の川畑選手に、ドリフトレースの魅力や作品の見どころを聞いた。
 -作品はCGやスタントマンを起用せず、プロによるリアルな実走が実現した。
 「これまで車関係の映画を見た際は、現実とちょっと違うなと感じることはあった。でもリアルにこだわった『アライブフーン』は、運転のテクニックをはじめ良い意味で映像にごまかしがない。車がギリギリまで接近するシーンなどは、見たままのすごさが伝わってくる。マニアが見ても納得のいく内容だと思う」
 -ドリフトは日本発祥のレース。スピードや運転の精度、カーブに入る侵入角度などさまざまな採点基準があるが、川畑選手の持ち味は。
 「ドリフト走行は、タイヤのグリップ力を超えた先のスピードが魅力。僕自身は圧倒的なスピードが自慢ですね」
 「コースによって異なるけれど、レースでは100~200キロくらいスピードが出る。直線を走っているとスピード感はあまりないが、角度が付いたドリフトになると、フロントガラスからの視界だけでは前が見えないほど。運転席や助手席から進行方向を見るような体勢になるので、そういったところでスピードを感じる」
 -作中、印象に残ったシーンは。
 「接近戦のシーンはインパクトがあった。また、主人公が1度負けて気持ちがびびっているときに、チーム全体でもり立てていくシーンは印象的だった。僕自身も浮き沈みが激しいタイプだが、経験を重ねていく中でコントロールできるようになった。考え込んでしまって『このままじゃダメだな』と思うときは、レース直前まで仲間と話をしたりして、メンタルコントロールをするようにしている。そういうドライバーのナイーブな部分が劇中にもあって、共感できるシーンが多い」
 「ドリフト競技はわずか1~2分で勝負が決まる。(ドリフトの)見せ場であるカーブは一つか二つ。スタートして一瞬で勝負が決まってしまうので、気持ち面のピークをスタートに持っていかないといけない」
 -作中では、ライバルとの駆け引きが垣間見えるシーンがある。
 「実際の(2台で走る)追走のレースでも、前に出てわざとゆっくり走ることで、後追いの車が余計なブレーキを踏んでしまって出遅れる…なんてことがある。相手のペースを乱すのも一つの勝負。とはいえ、単純に速さで逃げ切る、というのが1番かっこいい勝ち方ですね」
 -ドリフトレースを始めたきっかけは。
 「元々親の影響で幼い頃から車は好きだった。中学生のときに『ドリフトキング』と呼ばれる土屋圭市さんのことを知った。18歳で免許を取るまでビデオや雑誌で研究した」
 「長年ドリフトをやってきたが、全く飽きない。むしろ常に理想が上がっていて、いい走りをしたいという思いが強い」
 -映画は、eスポーツとリアルのレースが融合した現代的な描き方をしている。
 「映画のストーリーですごいと思ったのは、単にゲームの世界からリアルに転向しただけではなく、リアルの走りをゲームで予習や復習をしたりする。ゲームは、リアルのイメージトレーニングにとても合っている」
 「実際にゲームをしたこともあるが、ゲームのレースはかなり難しい。リアルに走るときは、重力をシートで感じてペダルを踏み込むが、ゲームは目と音からしか情報が入ってこない。ドリフト走行は加速や重力の感じ方を研ぎ澄ますことが大事なんだと、改めて気付かされた」
 -レースを始める前のルーティンは。
 「車に乗り込んでからシートベルト、ヘルメットを装着し、左手からグローブを着ける。なぜ順番を決めるかというと、平常心を保てているか確認するため。もっと前からルーティンを作ってしまうと緊張してしまうから、乗り込んでから短期集中するようにしている」
 -国内レース「D1グランプリ」では過去3度の総合優勝を果たしている川畑選手。4月の今季開幕戦では、追走で見事優勝した。今季の目標は。
 「もちろんシリーズチャンピオンが目標ではありますが、お客さんに喜ばれる、かっこいい走りをしたいと思います」
 -最後に、映画のアピールを。
 「スポーツカー全盛期のお父さん世代にぜひ見てもらいたい。そして映画と自分の若い頃の思い出を子どもたちに伝えて、ドリフトの魅力を広めてもらえたらうれしいです」
(聞き手・久保田麻依子)
   *   *
 作品はOSシネマズ神戸ハーバーランド(神戸市)やMOVIXあまがさき(尼崎市)など県内6カ所で上映予定。6月6~9日はイオンモール伊丹1階スカイコートで、D1参戦中のレースカーの展示などがある。6月6~19日は、イオンモール伊丹1階スイーツストリート前でパネル展がある。
【かわばた・まさと】1977年、大阪府出身。2007年、13年、15年のD1グランプリ総合シリーズチャンピオン。16年にドリフト世界最高速度記録(304・96キロ)を樹立。TOYO TIRE(兵庫県伊丹市)のドリフトチーム「Team TOYOTIRES DRIFT」所属。同社のスポーツタイヤ「PROXES」のブランドアンバサダーを務める。

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ