生き生き働く場、高齢者に 尼崎市「福祉工場」を刷新 健康保ち、地域の担い手に
2022/10/02 05:30
慣れた手つきで新商品のお弁当を作る高齢者=尼崎市久々知2
超高齢化社会を迎え、いかに「健康寿命」を伸ばすかが課題になる中、働きながら生きがいと健康を保って、地域の担い手になってもらう「生きがい就労」のモデル事業が、兵庫県尼崎市の市立老人福祉工場で始まっている。利用を想定するのは一般企業でのフルタイム就労は難しくても、元気で意欲も高い人たち。新たに弁当の製造販売も始め、「多くの人に食べてもらいたい」と意気込む。(広畑千春)
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老人福祉工場は1982(昭和57)年に設立。60歳の定年後も働ける場を-と、市が90年にかけ市内3カ所に増やした。当時は先駆的な取り組みだったが、近年は利用が低迷し、利用者も固定化、高齢化していた。そこで、現存する第2工場(立花町3)、第3工場(久々知2)を「生きがい就労」の場として再活用することにした。
尼崎市の2020年度の健康寿命は78・72歳、女性は83・47歳。全国平均は上回るものの、仕事を辞めた途端に家にこもりがちになり、心身ともに衰えてしまう人は少なくないという。
モデル事業では、尼崎市内で福祉やコミュニティースペース運営に携わる「企業組合はんしんワーカーズコープ」と、奈良市内で老人ホームなどに生きがい就労を取り入れている「あをに工房」が連携。今年7月に第3工場を改装し、就労的活動支援コーディネーターが高齢者の適性に応じた仕事を組み合わせる。軽作業に加え、こだわりの弁当の製造にも乗り出し、市役所などで販売している。
利用は1日1時間からでき、報酬も受け取れる。現在70~90代の27人が利用しており、毎日自転車で通っている同市の女性(87)は「働くのは好き。独り暮らしで、家ではしゃべる人もおらん。体を動かして、話をする方がいい」と笑顔を見せる。
あをに工房の中山久雄社長が話す。「介護サービスを利用するまでに、いかに長く楽しく過ごしてもらえるか。貴重な高齢者の経験や知恵を、社会や地域に生かしていく場にしたい」
近く新たに愛称をつけるほか、2024年度までの3年間で、自社製品の開発やオンライン販売を目指す。勉強会やイベントも開き、若い世代や事業者を交えた地域の交流サロンとしても定着させたいという。