「生涯現役」を地でいくシニアサッカーチームが神戸にある。2011年に発足した「六甲クラブ」。メンバー約25人の平均年齢は80歳を優に超えたが、「体が動く限り、いくつになっても仲間と一緒にボールを蹴り合いたい」と月2度の練習を心待ちにする。(山本哲志)
「ナイスシュート!」「いいぞ」。神戸市中央区のグラウンドにはつらつとした声が響く。激しいぶつかり合いは禁止されているが、紅白試合は真剣そのもの。スピードやキック力は衰えても、トラップやパスに往年の技が光る。
神戸高校で全国大会に2度出場し、関西大時代には日本代表にも選ばれた柴北勝利さん(83)=兵庫県明石市=らの呼びかけで発足し、今年で12年目。自身も含めて各地のシニアチームに所属していたメンバーが多いが、年齢とともに実戦の機会が乏しくなり、新たな活躍の場をつくることにしたという。
発足当初の平均年齢は73歳。西日本OBサッカー連盟に所属し、福井や大阪にも遠征してきた。近年は新型コロナウイルス禍による活動休止を経て、楽しみだった練習後の「一杯」は今も自粛中。それでも、仲間と懸命にサッカーボールを追いかける瞬間は、かけがえのないひとときだ。
今夏は大きな節目があった。練習拠点としていた「磯上公園」のグラウンドが体育館建設のため使えなくなり、同じ神戸市中央区内のポートアイランドにオープンした「港島南球技場」に移った。
「思い出の場所がなくなるのは残念」と柴北さんは惜しむ。65年前の高校生時代、全国高校選手権兵庫県予選の決勝を戦ったのもこの場所だったからだ。同じく発起人の一人、青山隆さん(88)=芦屋市=も「ここでクラマーさんに『ボールを迎えにいけ』とトラップ技術を教わりました」と懐かしむ。1964年東京五輪で日本代表コーチを務め「日本サッカーの父」と呼ばれたデットマール・クラマー氏(故人)の指導を関西実業団チーム在籍時に受けたという。
若き日の勇姿は記憶にとどめ、彼らの活動は続く。物故者も出てきたが、最若手の女子メンバーも加わり、60代から90代が元気に楽しむ。「サッカーが好き」という気持ちに、年齢は関係ない。