店員の母娘、連携プレーで詐欺被害防止 セブン-イレブン住吉本町店
2022/07/05 17:22
東灘署長から感謝状を受けた(右から)岩崎智子さん、娘の葵さん、セブン-イレブン神戸住吉本町店オーナーの松原達昭さん=東灘署
神戸市東灘区の「セブン-イレブン神戸住吉本町店」で5月、高齢の男性客が何者かにだまされて電子マネーを買わされそうになったところを、詐欺を疑った女性店員が警察に連絡した。男性が立ち去らないよう会話をつないだもう一人の店員は、一緒に働いていた娘だった。
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■返金できません
東灘署によると、5月14日正午ごろに65歳の男性が来店し、4万円分の「グーグルプレイカード」を購入しようとした。
高額のため、レジで接客したアルバイトの岩崎智子さん(51)が用途を尋ねると、男性は「パソコンのウイルスが」と慌てた様子だった。
詐欺が頭をよぎった岩崎さんは、電子マネーは返金できないこと、修理の支払いには普通使わないことを伝え、考え直すように説得。男性が売り場に引き返して迷っている間に、岩崎さんは隣のレジにいた娘の葵さん(21)に小声で相談した。やりとりを見ていた葵さんが「きっとそうだよ」とうなずく。智子さんは「念のために」と男性に断って110番した。
■天気の話
ここで気が変わって立ち去られると結局、他の店で買ってしまうリスクもある-。そう考えた葵さんは、不安そうに待つ男性客に「きょうは暖かいですね」「実は私もよく人にだまされることあるんです」などと話しかけ、警察官が店に着くのを待った。
東灘署の調べでは、男性はこの日、自宅のパソコン画面にウイルス感染を装った警告が表示されたため、指定の電話番号に連絡したところ、近くのコンビニで電子マネーを買うように指示されたという。
■2年前にも
智子さんと葵さんは2年前の20年8月にも、客が架空請求の手口で電子マネーを買わされかけているのに気付き、被害を防いでいる。
当時は親子で、今年5月のケースは智子さんが、それぞれ東灘署の署長感謝状を受けた。
前回は新型コロナウイルス感染拡大防止のため贈呈式ができなかったといい、今年6月21日に同署で行われた智子さんの表彰には、葵さんも同席した。
武田英雄署長が「勇気と思いやりの表れ」とたたえると、「母が主役」「娘が背中を押してくれた」と謙遜し合った仲良し親子。もともと勤めていた智子さんが大学生になった葵さんを「とにかくオーナーが優しいから」と誘い、一緒に働き始めて3年ほどがたつという。
■立て続けに
親子店員が慕うオーナー松原達昭さん(50)もこの日、岩崎さんと並んで感謝状を受け取った。
岩崎さん親子が被害を食い止めたわずか1週間後に、今度は深夜シフトに入っていたアルバイト安達真美さん(62)が、こちらも電子マネー4万円分の詐欺被害を防いだからだった。
同署によると、このときも高齢の客がパソコンのウイルス除去名目で何者かに購入を促されていた。安達さんの代理で表彰を受けた松原さんは「店がひまだからですよ」と冗談めかすが、防犯意識の向上に手応えを感じている。
警察が作る注意喚起のチラシは必ずコピーして従業員にも配る。詐欺を防いだ従業員には花をプレゼントし、署長感謝状は普段から目に入るようにバックルームに飾る。その積み重ねで意識はますます高まっているといい、「そもそもみなさんが頼もしいおかげですが、これからも店全体で気を付けていきたい」と話す。(井上太郎)
→「東灘区のページ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/)