「田田田堂」に込めた思いは 御影のハチミツ店、米粉菓子専門ブランドを設立

2022/07/15 17:16

「田田田堂」の看板商品の「山田錦サブレ」と「山田錦ガレット」(ハニーマザー提供)

 ハチミツの輸入販売会社「ハニーマザー」(神戸市東灘区御影中町)が今春、米粉菓子専門の新ブランド「田田田堂(たたたどう)」を立ち上げた。商品開発のきっかけは、社長の西田智祐さん(41)の娘の食物アレルギー。原料には兵庫県産の「山田錦」を使うことで、消費が低迷する酒米の需要拡大にもつなげたいという。  関連ニュース 【写真】マンションの1階にあるハニーマザー神戸店舗 しっとり、ふわふわで人気のケーキ 自家製米粉が決め手 神戸・北区 外はカリッ、中はもちもち 山田錦の米粉100%で「和カヌレ」発売 三木のパン店

■日本酒だけではない
 ハニーマザーは、西田さんの母親が1998年に創業。ニュージーランド産の「マヌカハニー」専門店として営業してきた。
 今年4月に立ち上げた田田田堂の看板メニューは、兵庫県多可町産の山田錦の米粉を使った塩味サブレと甘いガレット。サブレは黒こしょう▽トマト▽ターメリック▽ピスタチオ、ガレットはアールグレイ▽チャイ▽黒糖▽カカオ-と各4種類ずつ、それぞれ単品やアソート(組み合わせ)缶で提供する。
 山田錦と言えば日本酒が連想されるが、粘りが少なく甘みやうま味が豊かで、焼き菓子への適性も高いという。小麦や乳製品、卵、白砂糖は不使用。食物アレルギーがある人や、病気、宗教などさまざまな背景からグルテンフリーで生活する人たちに「垣根のないおいしさを提供する」との理念を掲げる。
■つらい思いをバネに
 中学生になった西田さんの長女には、複数の食物アレルギーがある。長女がまだ幼いころ、楽しいはずの旅行や外食先で、嫌な思いをすることがあった。
 「アレルギーのことを店の人らに伝えても、『そんなにいろいろ言ってたら何も食べられないよ』と言われて。当時はまだ、今ほど理解もなく、受け入れられてないんだな、という感覚がつらかった」
 手に入らないなら自分たちで作ろうと、妻の晴美さん(43)が、長女のために米粉の焼き菓子作りを始めた。店では動物性食品不使用の料理教室を開講し、アレルギーの原因食物を使わないスイーツの製造販売も手掛けるようになった。
■「田田田堂」に込めた思い
 米粉も最初は既製品を仕入れていたが、あるとき、6次産業化のプランナーから「山田錦を使ってみたら」と助言をもらった。西田さんは産地を訪ねてみた。
 日本酒離れにコロナ禍が追い打ちをかけ、山田錦の需要は低迷していた。栽培を断念する生産者も目立ち、耕作放棄地の増加が懸念される。そんな厳しい現状を知った。
 「わが子のために始めたことが社会的意義を帯びる。そう思うとまた燃えてきて」。豊かな実りをもたらす田んぼが有機的につながる。日本の稲作文化を守り、米粉食を世界に広める。「田田田堂」という名前には、そんな願いを込めた。
■オンラインでも販売
 若手生産者とタッグを組み、来年以降の展開として山田錦の田植え体験も構想する。西田さんは「『米粉でもおいしい』ではなく、『米粉だからおいしい』ものを作る。家族を思う気持ちと産地へのエール、この二つがスクラムを組むような発信ができれば」と話す。
 山田錦サブレは4種各7枚のアソート缶が1500円、山田錦ガレットは4種各3枚のアソート缶が1500円。7月に発売した米粉パウンドケーキミックスは750円。オンラインショップでも販売。ハニーマザー神戸店舗TEL078・224・5439、オンラインショップTEL0120・560・528(井上太郎)

→「東灘区のページ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/)

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