戦前から営業の鮮魚店、惜しまれ閉店 「魚だけ売るのが仕事やない」4代目の夫婦、地域との触れ合いも大切に

2022/05/28 05:30

閉店を前に記念撮影する清野善生さん(右から2人目)、知代さん(右端)夫妻=姫路市八代東光寺町

 戦前に創業し、地域住民に親しまれてきた兵庫県姫路市八代東光寺町の清野鮮魚店が、28日に閉店する。4代目の清野善生さん(73)と妻知代さん(68)夫妻=同市=が切り盛りしてきたが、体力面や設備の老朽化を理由に幕を閉じることになった。閉店を惜しむ常連客らが次々と訪れており、「あらためて地域に支えられてきたと感じる」と目を細める。(山本 晃) 関連ニュース 「からあげ定食」破格の380円 名物食堂が閉店 学生や常連に愛されて33年 「濃いめの味がおいしくて…」65年愛されたコロッケ店閉店 95歳の女性店主「ようやった」 老舗食堂の大盛りカツ丼 「インスタ映え」で苦渋の中止


 店は戦前から1950年代まで姫路城野里門跡にあったという。その後、移転を繰り返し、約30年前に現在地へ移った。
 新鮮な魚の中でも、特に人気なのが正月の縁起物「にらみ鯛(だい)」。直前に仕入れた魚を焼き上げるため、やわらかく仕上がる。東京から注文が入ることもあり、毎年、家族総出で準備を進めていたという。
 店を受け継ぎ、半世紀近く守ってきた清野さん夫婦は「魚だけ売るのが仕事やない」と口をそろえる。客との会話はもちろん、登下校する子どもたちにも声を掛け、地域との触れ合いを大切にしてきた。
 常連客からは閉店を惜しむ声が上がる。女性(74)は「スーパーとは鮮度が段違い。閉店は仕方ないが、やっぱり残念」。姫路出身で、学生時代に店を手伝ったという男性(44)=京都市=は「青春時代の思い出が詰まっている。せめて、食べ納めを」と店に駆け付けた。
 「ずっとまじめにやってきたから、最後までいつも通りでいたい」と善生さん。28日は既に大量の予約注文が入っているが、午後5時ごろまで店を開けるという。清野鮮魚店TEL079・223・7296

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