1本11万円の傘!? 播磨産レザーを使った「宝物」 開発に込められた思いとは
2022/06/01 05:30
レザー傘「アジサイ」を商品化した前田まり子さん(右)と村上奈美さん=たつの市誉田町井上
傘1本の税込み価格は11万円-。日本一の革どころである兵庫県の播磨産のレザーを張った傘が誕生した。長年、アパレル業界に身を置いてきた女性が発案し、同県たつの市の製革業者が協力。「アジサイ」と名付け、今月から国内外向けに販売を始めるという。取材をしてみると、革の傘という驚きの発想には、日本の職人仕事への思いが込められていた。(段 貴則)
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商品化したのは加古川市の前田まり子さん(53)。業界には輸入品を中心に低価格品があふれ、縫製や革など、日本の職人仕事が減っていく状況にもどかしさを感じていた。「職人が力を発揮できる仕事を作り、未来にメード・イン・ジャパンを残したい」。3年前、イタリア語で「宝物」を意味する「テソロ」を冠したプロジェクトを立ち上げ、商品開発を始めた。
第1弾はレザー業界。かばんや靴などの革製品では差別化できないため、革の傘を思いついた。商品化には、皮革の製造や加工を手掛ける丸太産業(たつの市)が力を貸した。前田さんと顔なじみだった同社の村上奈美さん(49)は「革を水にぬらすなんてタブー。革の傘は聞いたことがなく、発想に驚いた」と振り返る。
課題は撥水(はっすい)性に加え、軽量化と耐久性の両立だった。革を何度も水に浸し、水を通さないコーティングを試した。また、一般的な革製品に使う革の厚さと比べ、3分の1以下の0.4ミリまで薄くした。傘を差しても重すぎず、開閉を繰り返しても破れないという。
3年かけて完成させたアジサイは60センチで重さ500グラム。全68色ある。傘の持ち手は東京・浅草の職人が手掛け、大阪・富田林の職人が革を張って仕上げる。
傘は受注生産する。今月2日から8日まで京阪百貨店守口店で限定販売し、パリにも販路を広げる。前田さんは「どの業界も職人の高齢化や後継者不足が深刻。賛同する企業の力も借り、幅広い職人仕事を次代に引き継ぎたい」と話す。