「マスク外して」と言われても…教育現場に広がる戸惑い 小学校を訪ねてみた

2022/06/22 05:30

マスクを着用したまま合唱する6年生の児童=野里小学校

 新型コロナウイルス禍で過ごす3度目の夏がやってきた。教育現場では熱中症予防を優先し、国は登下校や体育の授業などでマスクを外すよう求めるが、教員や子どもたちには戸惑いが広がる。兵庫県姫路市内の小学校を訪ねた。(井上 駿) 関連ニュース どうする「マスク着用」 見直しの動き拡大も…気になる「感染拡大」「世間の目」 コロナ禍で筋力低下が要因か 相次ぐ熱中症、兵庫・尼崎で中学生22人搬送 専門家「例年以上に警戒を」 コロナ禍で低下…気になる子どもたちの体力 「すぐ疲れたと言うように」「以前よりよく転ぶ」


 「暑いからマスクを外してくださいよー」
 17日午前7時45分。野里小学校(同市坊主町)近くの歩道橋で、松尾弘子校長が登校中の児童に呼びかけていた。
 集団登校中の児童はほとんどがマスクを着けている。松尾校長の呼びかけに気付いてマスクを下げ、「あごマスク」にする児童がちらほらいる程度だ。
 文部科学省は5月下旬、登下校の際はマスクを外すように指導を求める通知を全国の教育委員会に出した。だが現場への浸透はまだ時間がかかりそうだ。
 「先生や大人が着けているので、外すのはなんか不安」と5年の女児。数日前からマスクを外して登校しているという5年の女児(11)は「暑いし、息苦しい時もあった。先生に『外しなさい』と言われてやっと外せた」と打ち明ける。
 音楽の授業ではマスクを着けたまま歌を歌う。給食の時間は黙って食べる「黙食」を継続中だ。
 教員が最も気を付けるのは、屋外で運動する体育の授業。文科省は今月10日、各地の学校で熱中症による搬送が相次いでいるとして、これまでの登下校時に加え、体育や部活でもマスクを外すよう指導することを求める通知を出した。
 その前日の9日、同校では1年と6年の体力測定が運動場で行われた。マスクを着けたまま参加しようとする児童も少なくなく、教員が「(マスクを)外しなさい」と声をかけて回っていた。
 松尾校長は「教育現場は急には変われない。自分の体調の変化をきちんと伝えられない児童もいるので、気を付けたい」と話す。
 市教委健康教育課は熱中症のリスクが高い場面では、感染症対策より熱中症対策を優先するように各学校へ文書を配布している。担当者は「学校での呼びかけだけでは限界がある。家庭や地域でも子どもの命を守る熱中症対策を理解し、協力してほしい」としている。
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