兵庫県尼崎市内の中学校で3日、体育大会の練習中に31人が熱中症のような症状を訴え、22人が救急搬送された。市消防局によると通報当時の市内の気温は25・1度。2日には大阪市内でも体育大会中に生徒らが熱中症を発症した。真夏を前に相次ぐ背景として、専門家はコロナ禍による筋力の低下を指摘し、多くの学校園で「コロナ前と同じように」競技や練習が行われることに注意を呼び掛ける。(広畑千春)
市教育委員会によると、練習は午前8時45分にスタート。全校生徒がグラウンドに集まり、マスクと帽子を着用した上で開会式の入場行進やラジオ体操などを行った。学校が測定していた「暑さ指数」は下から2、3番目の「注意」「警戒」レベルだったが、最終的に男子生徒6人、女子生徒16人が搬送された。
2日には大阪市内の女子校でも体育大会中の中高生ら31人が体調不良を訴え、搬送された。兵庫医科大の服部益治・特別招聘教授は「2年半続いたコロナ禍で屋外での活動が制限され、筋肉量が低下していることが最大の要因」とする。
人間の体は成人男性で約60%が水分で、その重要な貯蓄場所が筋肉だ。このため元々筋肉量が少ない高齢者や乳幼児、女性は特に、真夏のような気温でなくても脱水症状を起こす危険性が高まっているという。
一方で、新型コロナの感染状況が落ち着き「コロナ前」を求める動きは加速している。尼崎市教委も「感染に配慮しつつ、可能な限り元に戻す方針」とするが、服部教授は「100年に1度のパンデミック(世界的大流行)が起きたのに、すぐに例年通りに戻すのは無理がある」と強調。「これまでの基準や経験は参考にならない。体が衰えている前提で練習や競技の内容も考え直すべき」とする。
今年の夏は全国的に高温傾向との予報もあるが、暑さに体を慣らす「暑熱順化」には約2週間かかるとされる。服部教授は「朝夕に10分だけでも散歩をするなど、体に負荷をかけて筋肉を戻し、汗をかくメカニズムを回復させていくことが必要」とし、「過信せず、従来よりこまめな休息や適切な水分補給を心掛けて」と注意を促している。