関西最後の秘湯「鍬渓温泉」 新型コロナで休業「粘り強く経営続けていければ」

2021/05/10 05:30

3年前に完成した「鍬渓温泉きすみのの郷」=小野市下来住町

 400年以上の歴史を持ち、関西最後の秘湯と称される兵庫県小野市下来住町の鍬渓(くわたに)温泉が、営業再開から10日で3年を迎える。「知る人ぞ知る温泉」として地元住民に愛され、再オープン後は支配人の阿江治さん(70)が中心となって経営を続けている。現在は緊急事態宣言の発令で休業を余儀なくされているが「小規模温泉だからこその良さを生かして経営していきたい」と意気込む。(杉山雅崇) 関連ニュース 真冬の自然美、凍る「ナイアガラ」つらら垂れ下がり時間止まったような光景 別名「廃虚の女王」、朽ちたホテルが国の登録文化財へ マニアに人気 自然の中のテレワーク体験人気 木造一軒家、無料で貸し出し 豊岡

 加東郡誌などによると、地元の鍬渓神社の神託によって1582年に冷泉がわき出し、水浴すると疫病が治った-と伝わる。昭和初期までは温泉旅館があり、内外の来場者でにぎわったが、その後、旅館や湯治客は姿を消した。
 半世紀以上を経て1995年に地元の男性が簡易の脱衣場などを設置して復活させたが、2010年には廃業していた。
 小野市は17年、「最後の秘湯」を復活させようと、1億6千万円をかけて木造平屋の「鍬渓温泉きすみのの郷(さと)」を整備。阿江さんが支配人となり、湧き出る冷泉を岩風呂に引き、加温して提供している。
 再オープンから3年が経過したが、施設の経営状況は安定していない。男女の定員が6人ずつと小規模な浴場のため、客数の大幅な増加が難しいためだ。
 それでも、若年の入湯客は少しずつ増える傾向にあるという。新型コロナでの休業や客足の鈍りが目立つが、阿江さんは知名度の上昇に手応えを感じ、「こじんまりとした風呂は良さでもあるので、粘り強く経営を続けていければ」と話している。

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