神戸で人気、家庭料理店「かもめ食堂」が移転 西脇の古民家改装「普段使いの大衆食堂に」

2022/02/21 05:30

古民家を改修し、神戸市内から移転した「かもめ食堂」=西脇市黒田庄町黒田

 神戸市灘区で定食や持ち帰りの総菜が人気を集めていた「かもめ食堂」が昨年12月、兵庫県西脇市内に移転した。「都会の喧噪(けんそう)を離れ、ゆっくりと食事を提供したい」と、同市黒田庄町黒田の山裾にオープンし、船橋律子さん(45)、窪田靖子さん(49)の2人で切り盛りしている。地元野菜をふんだんに使った家庭的な料理は毎日でも通いたくなる味で、船橋さんは「普段使いの大衆食堂を目指したい」と話す。(伊田雄馬) 関連ニュース おひな様「第二の人生」 雪遊び、パラグライダー、薬屋…700体が古民家で再生 丹波・佐治 龍野城下、歴史残る町並みに古民家ホテル2号棟 3月開業、長期滞在にも対応 「丹波篠山でカリフォルニアの味を」 城下町の古民家に北米風ダイナー 元ホテル勤務の夫妻がオープン


 船橋さんは幼い頃から料理好きだが、店を開こうと決めたのは社会人になってから。テレビで聞いた「夢を口に出せばかなう」という言葉を信じ、勤め先の会社で「3年後に自分の店を持つ」と宣言。言葉通りに退社し、神戸の日本料理店で接客の経験を積んだ。
 3年後の2008年、なんとか母親と2人で、神戸市中央区の兵庫県庁前に店をオープン。店名は好きな映画のタイトルにちなんだ。「映画の制作会社に連絡すると、快く名前の使用を許してくれた」という。
 元来スパイスは苦手なので、優しい家庭の味を中心に据えた。弁当と総菜の持ち帰りのみでスタートし、15年に灘区に移転してからはイートインも開始。元ウェブデザイナーの窪田さんも店に加わり、経営は軌道に乗った。持ち帰り弁当が人気を集め、レシピ本も出版したが、徐々に体が追い付かなくなった。
 「仕込みの量が増えるにつれて朝がどんどん早くなり、忙しすぎて体調を崩しがちになって…」
 将来は自然豊かな場所に住みたいと希望していたこともあり、移住を決断。西脇市にゆかりはないが、車ですぐに都市部に出られる利便性が気に入ったという。
 新しい店は倉庫と庭付きの古民家を改装。ホームページ上の地図で、店への目印を「お墓」と描くほど、付近には建物がなく見晴らしが良い。「『ドッグラン作れます』が不動産屋さんの売り文句でした」と船橋さんは笑う。
 看板を除くと普通の民家と変わらない外観。「店の前から『場所が分からない』と電話してくる人もいる」と窪田さん。足を踏み入れると、知人の家に招かれたような感覚になる。
 メニューは5種前後の日替わり定食(税込み千円)が中心。近くの住民がくれるスダチやユズを使ったデザート、顔なじみの青果店が用意してくれる珍しい野菜を使った料理を考案するなど、新しい環境に創作意欲を刺激されている。
 16席の店内は満席のことも多いが、船橋さんは「もっと地元の人に来てほしい」。黒田庄にカモメはいないが、少しずつ地域になじんでいきたいと願う。「今後はテークアウトも検討し、より身近な店になれればうれしい」とほほを緩める。
 基本的に火、水、土、日曜に営業。午前11時~午後5時。食事のラストオーダーは午後2時半、喫茶は同4時半。午前11時に来店の場合のみ、席の予約可能。同店TEL0795・20・1679

神戸新聞NEXTへ
神戸新聞NEXTへ