六甲川活用し小水力発電 神戸のNPO、構想から10年かけて実現
2021/07/24 05:30
六甲川の流れを生かした小水力発電を始めたPVネット兵庫グローバルサービスのメンバー=神戸市灘区
自然エネルギー普及や森づくりに取り組むNPO法人「PVネット兵庫グローバルサービス」(神戸市灘区)が、六甲川(同)の流れを生かす小水力発電を始めた。江戸時代から水車で繁栄した地域で、放置された森林の再生も神戸大などと進める。「水の力で発展した神戸の歴史を知り、地球温暖化防止やエネルギーの地産地消について考える拠点に」と意欲を燃やしている。
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小水力発電は、河川や農業用水、上下水道など、使っていない流水のエネルギーを有効活用する。環境負荷の小さい自然エネルギーとして、水資源の豊富な地域で導入されている。
同法人は、小水力発電事業を支援する兵庫県の補助を受けて2016年から六甲川の調査を開始。国、県、市の関連許可機関との協議と申請作業、地元自治会向けの説明会やセミナーを重ねながら計画を進め、20年11月に工事に着手。今年4月に完成させた。
六甲川の砂防ダムの滝つぼからサイホン方式で取水し、河川西側の山林に設置した約400メートルの配管を流れた水で発電機を回す。川の流量が少ない時期は停止する。最大出力は19・9キロワットで、生活協同組合コープこうべに供給する。
同法人は、自宅に太陽光発電を設置する人でつくるグループを母体に、13年に設立。市民レベルで脱炭素地域づくりを進めようと、神戸・阪神地域の産業発展の歴史を伝える水力の再活用に向けて活動してきた。
「水車新田」の地名が今も残る地域では、18世紀後半には25基の水車があり、照明用の菜種油搾りに使われたという。19世紀になると灘の酒造用米の精米にも活用され、日本酒の技術革新の原動力となった。
同法人の代表者の北方龍一さん(85)は「構想から10年。苦労の連続でしたがここまでこられた。市民や中高生が都会で自然エネルギーと森林について学べる『場』をつくる連携の輪を広げたい」と呼び掛けている。(辻本一好)