神戸市バスの時刻表に刻まれた数字の意味とは… 採算性を示すというが「何を訴えたいのか」の声も

2022/04/21 05:30

バス停の時刻表に示された営業係数=神戸市灘区王子町1

 神戸市バスのダイヤが4月に改定され、時刻表でこれまで見かけなかった数字を新たに目にするようになった。114、169、132…。時刻表の右上に「100円の収入を得るために必要な費用」と示されたこの数字は、営業係数と呼ばれる。バスの利用促進や減便について市民に理解を求めるため、市交通局は今回初めて時刻表に記載した。(斎藤 誉) 関連ニュース 神戸市バス、三宮エリアは大人110円に 利用増へ実証実験始まる 兵庫・神戸の中心部に「バスの信号無視が多い」交差点 観察して分かった構造的課題 トミカでGO!GO!緑と白のツートンカラーでなじみの市バス限定販売


 同交通局によると、営業係数は、100円を稼ぐのに費用がいくらかかるのかを表す。100以上なら赤字、100未満なら黒字で、小さいほど採算が取れていることになる。
 市バスの利用者は近年、減少傾向にあったが、新型コロナウイルス禍でさらに大幅に減った。2020年度の1日当たりの平均乗車客数は19年度と比べて約4万人減少。運営状況も悪化し、20年度は全87路線中76路線が赤字だった。全体の運営維持につなげるため、今春の改定で全体の5%を減便したという。
 同交通局は、運営状況を市民に知ってもらうため、以前からホームページ(HP)に営業係数を記載。さらに広く厳しい現状を伝えることで、利用増につなげようと今回、全バス停の9割以上を占める約1400カ所の時刻表に数字を載せた。
 京都、名古屋、仙台市でも、同様の理由で数字を公表しているという。
 歯の治療の通院で複数の市バス路線を乗り継ぐという神戸市東灘区の女性(72)は、既に車の運転免許証を自主返納したため、移動手段をバスに頼る。
 「数字を示し、何を訴えたいのか分からない」と女性。「坂の多い地域。高齢者の暮らしに市バスは欠かせない。今後も減便が続くのだろうか」と不安がる。
 そうした声に対し、同交通局の担当者は「営業係数が赤字だからと言って、直ちに減便するわけではない」と説明。今回の係数の記載に加え、今後、同交通局のHPで市バスの運営状況を示すほかの資料の公表も検討しているといい、「多くの人に理解を深めてもらうことで、市民の足となるバスの存続につなげたい」と話す。

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