<これぞ神戸流>神戸人形の復興に取り組む人形美術家 吉田太郎さん(49)故郷の伝統工芸 次代へ
2022/05/12 05:20
神戸人形の復刻に取り組む人形芸術家・吉田太郎さん=神戸市東灘区住吉山手8
横のつまみを回すと、あんぐりと口を開けた人形が動き出す。スイカを切ったり酒を飲んだりと、滑稽な動きを繰り返す。阪神・淡路大震災発生以降、作り手が途絶えた木製からくり人形「神戸人形」の復興に情熱を燃やす。
明治中期に誕生した神戸人形。当時、外国人旅行者らに人気を博して海外に広がった。戦後は一時、制作が途絶えたが、1981年の神戸ポートピア博覧会で再び脚光を浴び、震災前までは製造、販売を手掛ける店舗があった。
神戸市中央区出身で、元町の玩具店に神戸人形が飾られる光景を見ながら育ったが、触れたことはなかった。大学時代に人形劇と出合い、卒業後は京都府拠点のプロの人形劇団に入った。役者も担ったが、後に制作専業に。97年、東灘区に自宅兼工房を構えた。
生まれ育った故郷の風景は震災で一変。後に神戸人形の作り手が途絶えたことを知った。「自分が好きな神戸が無くなった」と悲しみに暮れた。
「あなたが作ってみたら?」。妻の綾さん(51)からの提案に道が開けた。人形制作の経験から仕掛けは想像がついたが、その姿やバランスなどの細部を再現するため、日本玩具博物館(姫路市)に足を運び、復興を目指した。
2015年に販売開始。復刻を待っていた人から「懐かしい」と反応は上々だ。「震災で壊れた人形を直して」との依頼も。タコのお化けが飛び出す独自の仕掛けなど、全国からネットで注文がある。
夢はどこか別の店先にも神戸人形を置いてもらうこと。「変な人形を売っている店を知っているよ、と街で話の種にしてもらえるよう頑張りたい」。ウズモリ屋TEL078・846・2196
(長沢伸一)
【2019年4月14日掲載】