神戸から徒歩40秒で「東京駅」?! 連絡通路の床に…須磨まで全部で45駅 JR住吉駅前に謎の表示
2022/08/25 05:30
JR住吉駅につながる連絡通路の床に記された「東京」の駅名表示。奧に「横浜」「国府津」と続く=JR住吉駅前
JR住吉駅(神戸市東灘区)から歩いてすぐの所に「東京駅」がある。試しに記者が「住吉-東京間」の所要時間を計ると、およそ40秒で「上京」できた。ちょっと頑張って走れば20秒を切れる。新型コロナウイルス禍で観光や旅行は控えているけど、何となく旅の気分を味わいたい。お金と時間はかけたくない。そんな人はぜひ一度、住吉駅に降り立ってみてほしい。
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■全部で45駅
「東京駅」の正体は、駅ビル2階の改札と周辺施設を結ぶ連絡通路の床に刻まれた駅名表示である。
場所はコープこうべの店舗「シーア」の駐車場入り口前。茶色っぽいタイルに縦13センチ、幅25センチほどの白枠があり、「東京」の2文字が記されている。
さらにおよそ1・5メートル間隔で「横浜」「国府津」「小田原」「熱海」と続く。「米原」「野洲」などJR新快速の停車駅を経て、「塚本」からの神戸線は各駅表示に。駅ビル「Liv(リブ)」前の「住吉」で折り返し、西は「須磨」まで。全部で45駅あった。
■誰が何のために
住吉駅発着の六甲ライナーを運行する「神戸新交通」(中央区)によると、この連絡通路は大部分が神戸市の所有で、神戸新交通が協定に基づいて管理を担っている。一部は「JR西日本アーバン開発」とコープこうべの管理だが、いずれも「記録がなく、当時を知る人も今は在籍していない」などの理由で、詳しい背景は分からないという。
JR西日本アーバン開発の担当者は「そもそも誰が考えていつ、何の目的でできたものなのか、われわれも気になってるんですが…」と唇をかんだ。
唯一、時期には手がかりがあった。JR西日本アーバン開発によると、駅ビルなどが建ったのは1989(平成元)年。そして、神戸線の「さくら夙川」と「甲南山手」が抜けていることから、甲南山手駅ができる前の96年10月までに記されたと推測できる。
また、関東、東海区間では「国府津」や「富士」が見られるため、新幹線ではなく東海道本線を表していることもぎりぎりうかがえる。
■東京のほうから
この謎の駅名表示のことを、利用者たちはどう思っているのだろう。
8月中旬の午後、通行人の様子を眺めていると、時折「きょうと!」「なごや!」などと言いながら表示をたどり、はしゃぐ子どもたちがいた。目線が低い方が気付きやすいのかもしれない。大人はと言うと、ほとんど気にも留めずにすたすたと通り過ぎていた。
買い物帰りの男性(84)=東灘区=は「駅名表示はずっとあるけど、なんか書いてあるわと思うぐらい。それ以上深く考えたことはないね」と涼しい顔だった。
連絡通路の出入り口は4方面あり、南は「東京」、東は「浜松」、西は「須磨」で、北が「住吉」になっている。「今日はどちらから来られましたか」と記者が尋ねると、男性は魚崎の自宅からバスでやって来たことを真面目に説明した後、シーアの駐車場を指さしながら付け加えた。「バスを降りてからはあっちから、えーと、東京のほうから」(井上太郎)