これは実力行使の民主主義　社会性高い舞台作品で知られる実力派劇団・燐光群の新作公演

　工場廃液を垂れ流し市民との話し合いを拒否する企業に対して、排水溝に生コン６トンを流し込み力ずくで操業をストップさせた事件が、１９７１年に高知市でありました。
　その事件を丹念に調査し今回の舞台化にこぎつけたのが、いつもジャーナリスティックな視点で社会問題に鋭く切り込んでいる劇団「燐光群」です。
　海と川を汚染し、市民の健康被害や魚の大量死が発生しても何らの対策を行おうとしない企業に業を煮やした市民が立ち上がり、工場排水を止めるために工場の排水溝を封鎖するという実力行使に及んだのでした。当然、これは刑事事件に発展したのですが、一方では多くの市民がこの行動に感謝したのだといいます。
しかし、この事件が起きるまでは、行政も政治も多くの市民も具体的な行動をとることはなく、この問題に対してどこか他人事であった様子が舞台で描かれます。
高度経済成長期に多くの公害問題が発生し、さまざまな反対運動が繰り広げられました。しかし、それらはけして過去の問題ではなく、現在もまた同様に、さまざまな社会矛盾が起きているのだけれども、ついついそれらを見過ごしたまま日々の生活を送っていることが多いのではないでしょうか。
過激なまでの実力行使による市民の直接行動。それが社会に大きな影響を及ぼすという民主主義の一形態を、この舞台を見て確認してみるのもいいかもしれませんね。