踏切で突然倒れた男性、駆け付けた5人が見事な連携で救助 安全な場所に移動、AED手配、胸骨圧迫などスムーズに 三田
2022/07/26 05:30
踏切で突然倒れた男性を連携して応急手当てし、命を救ったとして、兵庫県三田市消防本部は、10~50代の男性5人に感謝状を贈った。安全な場所への避難、自動体外式除細動器(AED)の手配、胸骨圧迫といった一連の動作をスムーズに行ったといい、仲田悟消防長は「助けがなければ命を落としていた可能性が高い」と感謝を伝えた。(小森有喜)
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感謝状を受け取ったのは、谷口博康さん(49)=警備会社員▽小南琢さん(40)=尼崎東署員▽岸本悠生さん(15)=三田松聖高1年▽初谷洋志さん(51)=同高教諭▽田野益三さん(39)=同。
4月22日午前7時前、JR相野駅近く。駅に向かって走っていた男性(60)が突然、踏切の真ん中で倒れた。徒歩で通勤中だった谷口さんが異変に気付き、すぐに駆け寄った。親の車に乗っていた岸本さんも倒れる瞬間を目撃。助手席から飛び降りて踏切へ走った。「この場所にいては危ないと思った」。通りがかった別の男性と協力して踏切の外へ体を動かし、谷口さんが119番した。
駅近くにある勤務先の三田松聖高に車で向かっていた初谷さん、田野さんも一部始終を見ていた。同校では2年生に救急救命の講習やテストを行っており、教諭である2人も救命の知識を学んでいた。車を止めて駆け寄り、初谷さんが胸骨圧迫を、田野さんがAEDを探しにいくことになった。どちらからともなく、アイコンタクトで役割が決まったという。
田野さんは、近くの湊川短期大学まで走った。「今思えば駅に行った方が早かったと思うんですが、無我夢中で」。早朝で人が少なかったこともあり大学内ではすぐに場所が分からず、隣接する三田松聖高まで走った。その間も初谷さんが胸骨圧迫を続けた。
出勤前だった警察官の小南さんは、自宅の窓から男性が倒れる姿を見た。駅の駐輪場にAEDがあると知っていたため、現場に寄って「AED取ってきますね」と声をかけ、踏切を渡って駐輪場へ。AEDを取って戻ろうとしたが、遮断機が下りている。「危険だが今は仕方ない」と電車が来ないことを確認して棒をくぐった。すぐに谷口さんがAEDを作動させ、電気ショックをして胸骨圧迫を再開すると、男性が呼吸を取り戻した。
直後に田野さんもAEDを抱えてきた。「これだけの短時間でAEDを二つも持ち寄ったことがすごい」と仲田消防長。早期の通報も幸いし、6分で救急車が到着。谷口さんが一緒に乗り込み、搬送される車内でも声をかけ続けた。男性は一命を取り留めた。仲田消防長は「人命救助は初動が肝心。たまたま近くにいた皆さんが当事者意識を持って迅速に動き、連携したからこそ助けられた」と感謝を述べた。
初谷さんは「救命に関する知識があり、対応できた。生徒たちに経験を伝えたい」と話した。病院で男性の家族とも話したという谷口さんは「男性の方は大変な思いをされたので感謝状を受けるのは恐れ多い。でも助かって本当によかった」と話した。
■AEDの使い方は?自動音声に従って操作
もし、今回の事案のように、目の前で人が倒れた場合、周囲の人はどのようにAEDを扱えばいいのか。公共施設のほか、設置している民間企業も増えている。基本は自動音声に従えば操作できるが、胸骨圧迫の仕方も含め、紹介する。
①傷病者の肩を軽くたたきながら大声で呼びかけ、反応や仕草がなければ、119番とAEDの手配を行う。胸や腹部の動きに注意し、10秒以内に呼吸の有無を判断する。呼吸がない▽普段通りでない▽分からない-場合は「呼吸なし」と判断。胸骨圧迫を行い、AEDを使用する。
②胸骨圧迫は、心臓付近を圧迫することにより、動かなくなっている心臓の代わりに酸素を含んだ血液を循環させる手法。傷病者の胸の真ん中に両手を重ねて当て、肘をまっすぐ伸ばして、手の付け根部分に体重をかけ、圧迫する。1分間に100~120回のリズムで、胸が約5センチ程度沈むよう、約30回間断なく行う。子どもであれば胸の厚さの約3分の1の深さまで圧迫。
③AEDが用意でき次第、カバーを開け電源を入れる(自動的に電源が入る機種もある)。AEDの案内(自動音声)に従い、電極パッドの絵に表示されている通りにパッドを傷病者の素肌に直接張る。
④パッドを張ると、AEDが心電図を解析し、電気ショックが必要な状態であるかどうかを判断する。電気ショックが必要な場合は自動的に充電が始まる。案内に従い電気ショックボタンを押し、電気ショックが不要だった場合も含め、胸骨圧迫を再開する。