「ナンデモ屋」、高齢化地域の救世主に 15分、300円「温かい輪」仲間も募集

2022/01/25 05:30

依頼を受けて物干しざおの高さを調整する渡部政弘さん=相生市川原町

 高齢化が進む兵庫県相生市相生(おお)地区で、理学療法士の渡部政弘さん(40)=同市=が昨年夏に始めた「ナンデモ屋」が好評だ。買い物や草刈り、家の掃除などちょっとした作業を原則15分300円で手伝っており、高齢者や障害者から依頼が舞い込んでいる。活動範囲を広げようと仲間も募っており、渡部さんは「困ったときに助け合える温かい輪を地域に根付かせたい」と話す。(地道優樹) 関連ニュース 「買い物難民」の命綱 全国で存在感増す移動スーパー 解決!空き家問題 尼崎市、市内8千軒超える 企業とタッグ、無料で解体費用の相見積もり 「墓参り、代行します」 花と線香お供え、草むしり、掃除…サービス多彩 「リモート参り」も可能


 相生地区は相生湾の奥にあり、昔ながらの家屋が路地沿いに並ぶ。2021年12月末時点の人口は1455人。うち65歳以上の割合は57%で、市全体の36%よりも高くなっている。
 渡部さんは奈良県の総合病院で10年間勤め、16年に妻の実家がある同県赤穂市に転居。翌年から相生地区の福祉施設「さくらホームおおの家」で働き、20年に相生市へ移った。
 「ささいな悩みにも耳を傾け、理想の暮らしを後押しする」のが信条。そのためには地域での助け合いも必要と考え、相生での仕事を機に介護や福祉、医療の専門職グループ「ええで!あいおい」を立ち上げた。月に1回、住民との交流会を重ねる中で「近くにスーパーがなくて買い物が不便」などの声を聞き、リヤカーで野菜やパンの移動販売を始めた。
 さらに「腰を痛めて電球が交換できない」「山の上の墓掃除に行けない」といった悩みを個人的に聞く機会も増え、無償で手伝うように。ただ「無料だと頼みにくい」とも言われ、昨年8月に便利屋を開業した。施設での勤務は週3日に減らしてもらっている。
 依頼は毎月10件前後で、内容はさまざま。ある高齢男性からは「畑を処分してほしい」と注文を受けた。理由を尋ねると「けがをするのでは-と家族が心配しているから」だという。一方で男性は「収穫した野菜を近所にお裾分けするのが楽しみ」とも。そこで渡部さんは、畑仕事が続けられるよう草引きと畝作りをサポート。畑は今も処分されずに残っている。
 「周囲に迷惑がかかるかもしれない、という理由で趣味や生きがいを諦めてほしくはない」と渡部さん。活動エリアの拡大や活発化を目指して仲間も募集中で、既に相生市や赤穂市、同県たつの市の会社員5人が加わった。
 相談は無料。水道や電子機器などの複雑なトラブルの場合、専門業者を無料で案内することもある。

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