故中西勝さんの記念館、神戸に 未完の絶筆も展示
2020/01/04 11:19
中西さんの作品が並ぶ会場=神戸市東灘区鴨子ケ原3(撮影・山崎 竜)
兵庫洋画壇をリードした中西勝(まさる)さん(1924~2015年)の死去から4年余り。遺族らの手で神戸市東灘区の旧自宅に記念館「無字庵(むじあん)」が開館した。転機となった世界旅行の思い出、その後、お気に入りとなったモロッコやメキシコの人物画、創作の支えとなった民芸品や思いをつづった書などを展示。未完の絶筆にも出合える。人柄がにじみ出るユニークな施設には、熱心なファンらが詰めかけている。(金井恒幸)
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中西さんは大阪市生まれ。1949年、神戸市の西代中の美術教諭となり神戸に移住。同年、二紀大賞を受賞し、その後は二紀会で中心的な役割を担った。世界旅行後の72年、代表作「大地の聖母子」で「安井賞」を受けた。
■旅が影響
65~70年、妻と車で行った世界旅行が作家活動に大きな影響を与えた。欧州では教会などの建物を多く手掛け、米・ニューヨークでは都会らしい群像を描いた。街のエネルギーを感じさせる赤色が印象的だ。
大好きだったメキシコ、モロッコでは関心が、伝統文化や暮らし、土や泥にまみれた人間そのものに移る。「坐(ざ)す メキシコ」は、1・6メートル四方の大画面に、真っすぐ正面を見つめる帽子の女性が頬づえをつく。「聖家族・モロッコ」は家族4人と家畜を真正面から描き、深いつながりを感じさせる。
妻のハンドルで旅行に使った車「かたつむり号」の内部のスケッチからは、花を飾り、日常生活を楽しんでいた様子がうかがえる。旅で使った炊事道具の絵も並ぶ。
創造意欲を刺激した中南米やアフリカの器などの民芸品もたくさん描いた。2015年の絶筆にも旅の影響が。シャベルを持った父、母子たちの服装はメキシコ風、チョークによる輪郭線もそのまま残している。
■人間賛歌
書も好きだった中西さんは、感動した事物を書の作品として残した。
モロッコで出会った黒い瞳の子どもを、身に着けるのはぼろだが「神の子の様」と表現。メキシコでは「土の上に人が生きてゐる。不思議なふうに思った」「色んな人がそれぞれそこで何かして生きて居る」と、感動をカラフルな文字でつづった。
茶室にある書には「人間生きているだけで充分」「毀(こわ)してはいけない 神の造ったこんな貴重な生物 人間」と、命の尊さに触れる。中国での厳しい軍隊生活が背景にあるという。
中西さんの作品に詳しい市立小磯記念美術館学芸係長の廣田生馬さんは「中西さんは『画家である前に人間でありたい』と話していた。人への温かいまなざしを生涯貫いた」とみる。
入館無料。開館日は金土日曜と祝祭日。9日まで休館。同館TEL078・811・8118