震災時、大気中の石綿「高濃度」 95年2月神戸を調査

2020/01/12 07:00

シンポジウムで阪神・淡路大震災での石綿飛散の危険性を指摘する中地重晴教授=神戸市勤労会館

 1995年1月の阪神・淡路大震災直後に被災地で活動後、アスベスト(石綿)関連疾患で亡くなった元警察官が「約1カ月間」の石綿吸引歴で公務災害認定されていた問題を受け、当時、現地調査した専門家が11日、大気中の石綿の数値が「全国平均より非常に高かった」と指摘した。石綿関連疾患の潜伏期間は十数年から50年程度とされており、改めて今後の発症の多発に警鐘を鳴らした。震災から四半世紀を前に、健康管理と補償制度の充実、今後の再発防止が急務となっている。(小林伸哉) 関連ニュース 震災石綿訴訟 元明石市職員の妻「無念晴らしたい」 「船上では石綿が雪のように」肺がんの男性3人が勤務先提訴 大震災で被災者励ました桜、老齢で伐採

 阪神・淡路の復旧作業などを巡る石綿被害では、少なくとも5人が労災や公務災害に認定。さらに今月、2014年に悪性胸膜中皮腫で亡くなった元警察官=当時(72)=について、95年1月から約1カ月間、神戸市長田区で警戒活動をしたことが発症原因と認定されていたことが判明した。今後、市民やボランティアの発症多発が懸念される。
 この日、神戸市内で震災と石綿健康被害を検証するシンポジウムがあり、熊本学園大の中地重晴教授が講演。95年2月に同市東灘区の解体現場近くで大気1リットルあたり約250本(全国の住宅地の平均値は0・15本)を確認したことを報告した。中地教授は被災地で、ずさんな解体作業や防じんマスク未着用の作業者を目撃。行政による事業者への飛散防止周知が95年7月以降だったことも「遅かった」と批判した。
 また、吹き付けアスベスト使用建物の正確な把握ができていないことや、行政の報告より石綿濃度が高い現場があったことなどを挙げ「短期間の吸引歴でも補償すべき」と主張した。さらに「作業者や住民に健康管理手帳を配るなど登録制度が必要」と訴えた。
 シンポでは、参加者約230人が災害対応を想定するカードゲーム「クロスロード」を体験。マスク備蓄の必要性や正しい着用法を学んだ。

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