神戸港で船の貨物数などを確認する検数作業でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんにかかったとして、男性3人が6日、勤務先だった一般社団法人全日検(東京)を相手取り、計7590万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。提訴後の会見で、男性らは「船上では石綿が雪のように舞っていた」などと証言。安全配慮義務違反があったと主張した。
3人は、神戸市中央区の赤木正夫さん(83)と同市灘区の倉渕博之さん(78)、兵庫県西宮市の田中恵さん(70)。いずれも約40年間、神戸港で働き、石綿健康管理手帳を取得。2011~17年に肺がんの診断を受け、神戸東労働基準監督署に労災認定された。
訴状などによると、3人が働いた1970年代の神戸港では、海外から輸入された石綿の約3割が扱われ、年間10万トン超の年もあった。石綿入りの麻袋を運ぶうちに破れ、粉じんが飛び散るのが日常だった。
原告側は、全日検が遅くとも60年ごろまでには健康被害の危険性を認識できたのに、呼吸用保護具などの支給や安全教育をする義務に反した-と主張する。
原告側は6月に文書で損害賠償を求めたが、全日検からの返答はなかった。17年度までに原告らを含む元従業員9人が肺がんで労災などに認定されている。赤木さんは「あまりにも無責任。生きている間に謝罪してほしい」と語った。
取材に対し、全日検は「担当者不在のため、コメントできない」としている。