在日外国人募る不安 休業補償、給付金…相談急増
2020/06/13 09:23
資料を見ながら対策を練る神戸国際協力交流センターのダン・チュン・フンさん(左)ら=神戸市中央区浜辺通5
新型コロナウイルスの感染拡大は、日本で暮らす外国人たちの生活にもさまざまな影響を及ぼしている。支援団体には、工場の減産や店舗の休業などで仕事を失ったり、収入が大幅に減ったりして、生活に困窮しているといった相談が相次ぐ。NGO(非政府組織)のアンケートでも、再入国制限のために親族の葬儀に出られなかったり、中国・武漢出身であるために子どもの診療を拒否されたりした体験が寄せられた。(末永陽子、杉山雅崇)
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在日ベトナム人らを支援する「ベトナム夢KOBE」(神戸市長田区)には、コロナに関連した幅広い相談が寄せられる。3月以降、兵庫県内での感染拡大とともに件数は増えてきた。
同市内に住むベトナム人女性(35)は4月、昨年から働いていた飲食店を解雇されたという。工場に勤める在日2世の夫も、減産を理由に6月上旬まで勤務時間を半減され、「子ども2人を抱えて、どうしたらいいのか」と途方に暮れる。日本に来て十数年。本国に戻って生活を立て直す余裕もなく、「子どものためにも神戸で何とか乗り切りたい」と求める。
留学生らも苦境に立たされている。神戸国際協力交流センター(同市中央区)で働くダン・チュン・フンさん(30)の元には、神戸で学びながら働く若者から相談が相次ぐ。20代男性はホテルの清掃業を解雇され、収入がゼロに。コンビニで働く20代男性は、店が日本人を多く雇うようになり、就業時間を減らされたという。
ダンさんは「頼れる親族もない中、収入源を絶たれて不安を抱える若者が多い」と心を痛める。
NGO「多文化共生センターひょうご」(神戸市東灘区)が4~5月、インターネットで実施したアンケートでも、全国97人の在日外国人からコロナ禍でのつらい体験が寄せられた。
仕事で来日している男性は新型コロナで親族を亡くした。英国での葬儀に参加したかったが、一度出国すれば日本に長期間再入国できない可能性があり、泣く泣く断念したという。中国・武漢出身の女性は小児科で、子どもの診療を拒否された。別の女性は「(外国人への)差別が、新型コロナ禍でさらに激しくならないか心配だ」と記している。
同センターの北村広美さんは「外国人は差別への恐怖と、母国への心配など、心理的負担は大きい。彼らの気持ちを理解した上で、共に暮らす意識を持つことが大切だ」と話した。
■多言語通訳で支援奔走
コロナ禍による生活困窮や不便、差別などに直面する外国人のために、兵庫県内の各団体が相談対応や、制度、手続きの案内などといった支援を続けている。
多言語通訳を手がけるNPO法人「多言語センターFACIL(ファシル)」(神戸市長田区)は外国人向けの情報発信に力を入れる。ホームページには、定額給付金の条件や申請方法などを14カ国語で説明。コロナで働き先を失った技能実習生らに再就職先を探す国の支援策など、制度が更新される度に次々と紹介している。
総務部長・理事の村上桂太郎さんは「外国人は情報が圧倒的に少ない分、不安がより大きくなってしまう」と話す。
NGO「多文化共生センターひょうご」(同市東灘区)も、多言語による相談対応や生活支援に取り組む。国籍を問わず「日本語によるコロナのニュースは分かりにくい」との指摘も多く、同センターの北村広美さんは「行政は外国人に向けた広報活動にも力を入れてほしい」と訴える。
神戸国際協力交流センター(同市中央区)は、11言語による相談窓口で対応。神戸市に働きかけ、外国人支援団体への助成や、有償ボランティアの募集などの留学生支援が始まった。「支援を知らない外国人も多いので、幅広くアピールしていきたい」としている。
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