尼崎・ユニチカ記念館、解体検討 1900年完成の洋風建築、近代化遺産

2020/07/27 07:00

解体が検討されているユニチカ記念館=尼崎市東本町1(撮影・風斗雅博)

 1900(明治33)年建設の洋風建築で、経済産業省の「近代化産業遺産」に選ばれている尼崎市東本町1のユニチカ記念館(旧尼崎紡績本社事務所、現在は休館中)について、所有する繊維大手「ユニチカ」が解体する方向で検討していることが26日、分かった。老朽化が進み、耐震化工事などに多額の費用が見込まれることが理由。文化的価値や工都・尼崎の発展に貢献した経緯などから、文化財関係者からは惜しむ声が上がる。 関連ニュース ライト建築、世界遺産決定 追加候補に芦屋・旧山邑家住宅 財界の名士が次々邸宅 かつて神戸に「日本一の富豪村」 神戸の現役最古、小学校建て替え「待った」 新聞記事で市長「歴史的価値」と再検討要請

 同館を本社事務所として建設した「尼崎紡績」はユニチカの前身に当たる。建物は英国式れんが造りの2階建てで、尼崎市内に現存する最古の洋風建築。兵庫県の景観形成重要建造物にも指定されている。内部には暖炉や応接室などがあり、近年は創業以来の史料や、64年東京五輪で優勝した女子バレーボール日本代表ゆかりの品などを展示していた。
 尼崎紡績の初代社長を務めた広岡信五郎は、2015~16年のNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインのモデルとなった実業家・広岡浅子の夫。朝ドラ効果で来館者が急増したが、建物の老朽化により昨年7月から休館している。
 ユニチカによると、改修や耐震化などの工事には億単位の費用が見込まれるため、解体する方向で検討を進めている。同館の住所に置いていた本店所在地も今年6月の株主総会で大阪本社(大阪市中央区)への変更が承認された。跡地の活用方法は未定という。
 尼崎紡績は尼崎で最初に造られた大工場だった。尼崎市立文化財収蔵庫の学芸員、桃谷和則さん(58)は「尼崎紡績の成功により、明治維新の変化に乗り遅れた城下町・尼崎に工場が集まり、経済的な発展を遂げた。工業都市・尼崎の出発点といえる施設」と評する。
 近代建築史が専門の笠原一人・京都工芸繊維大助教(49)は「屋根と壁の接合部は欧州で伝統的な格調高いデザインで、車寄せも設けられていて品格がある。尼崎の近代化の象徴。残してほしい」と訴えている。(伊丹昭史)

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